プルースト効果で、「こころ」に響く、アロマ空間デザイン
あなたのマドレーヌは?
「街で、すれ違った人から、ふっと香ってきた香水で、昔の恋人を思い出す。」
「生あたたかい土や草の匂いで、自然の中で駆け回って遊んだ子供の頃の想いが蘇る。」
「海外から帰国し、空港の到着ゲートに漂う香りで、ホッと懐かしさに包まれる。」
そんな経験はありませんか?
紅茶に浸したマドレーヌをひと口かじった途端
その香りと風味から、不意に幼い頃の懐かしい記憶が蘇る・・・。
これは、フランスの文豪マルセル・プルーストの小説
「失われた時を求めて」の冒頭の一節。
香りで、記憶や感情を呼び覚ますこの現象は
彼の名作になぞらえて「プルースト効果」と呼ばれています。
フランスで「Quelle est votre madeleine?(あなたのマドレーヌは?)」
という問いかけは、記憶の鍵を尋ねるフレーズとして、定着しているほど。
プルースト効果の主役とも言える、香りを感知する「嗅覚」。
「嗅覚」は「記憶」「感情」「本能行動」「快・不快」を司る脳の領域である大脳辺縁系にダイレクトに作用します。
この「嗅覚」の特性を生かし、植物の100%天然の芳香成分を抽出した精油(エッセンシャルオイル)を用いて心身のバランスをサポートする代替療法を
「アロマ(芳香)+セラピー(療法)」と呼びます。
「香り」に秘められた可能性
イギリスやフランスなど主にヨーロッパで、美容・リラクゼーション・医療現場で活用されていたアロマセラピー。
この「香りの療法」が日本に紹介されてから、およそ35年。
1995年の阪神淡路大震災後の「癒しブーム」とともに、主にリラクゼーション目的で急速に広がりました。
現在では、リラクゼーション・美容・健康はもちろん、医療や介護の現場でも活用され、脳のアンチエイジングにも効果的に作用することが、メディアを通じ広く知れ渡り、さらなる研究が続けられています。
「嗅神経を刺激すれば記憶の貯蔵庫である「海馬」の機能が回復し、認知症予防の効果が期待できる」と、鳥取大学医学部の研究で実証され、ローズマリーやレモンといった精油が店頭から消えたことは、記憶に新しいですね。
「質の高い眠りのために」「ストレス緩和のために」「免疫力を高めるために」etc
すでに、アロマを日常に取り入れておられる方も多いかと思います。
現在では、個人の家でも当たり前のように「香り」が利用されるようになり 「アロマセラピー」は、さらなる進化・発展を遂げています。
香りで空間を演出する
「クリニックの待合室に漂う心地の良い香りで、緊張が和らぎ、待ち時間の苦痛が軽減した。」
「ラグジュアリーホテルの香り高い空間に足を踏み入れ、一瞬でドラマチックな気分になった。」
クリニック・ホテル・商業施設・空港・レストルームなどの公共のスペースでも、質の高く、心地の良い空間づくりのために、「香り」が利用されるようになりました。
その空間を訪れる顧客満足度の向上、企業イメージUP、ブランディング、購買意欲の促進などに、「おもてなしのこころ」を伝え、イメージや空間を「演出」するなど、「香り」を効果的に活用する企業も増えています。
このように「香り」の中でも
「アロマ(植物から抽出された天然の芳香成分である精油の香り)」
と 「空間デザイン」の融合。
それを「アロマ空間デザイン」と呼びます。
隅々にまで真心の行き届いた空間や
質の高い洗練されたおもてなしは
そこに滞在する人の、大切な記憶として、「こころ」に響き続けることでしょう。
では、空間が求める目的やニーズに合わせた、こころに響く「香りの空間演出」は、どのようになされるのでしょう?
次回のコラムで、紐解いていきますね。
その他のコラム:
ストレスフリー!集中力UP!心地よい眠りへ!「空間に、ここちよくフィットする香り」の選び方
その速度は0.2秒以下!一瞬で空間の印象を変える、香りの拡げ方
筆者の紹介
三井エレナ(ELENA MITSUI)
AROMATIQUE SPACE DESIGNER(アロマティーク スペース デザイナー)
《略歴》
自らの不調を機に、アロマの世界に出会う。
香りの世界に魅せられる中 劇的に心身の不調が回復したことを機に アロマのプロの道を志し、国内外のアロマ資格取得。
香りのイベントやセミナー講師、 クリニック、ギャラリー、イベントスペース等の アロマ空間デザインを担当。
・2010年:(公社)日本アロマ環境協会認定アロマセラピスト アロマセラピーインストラクター資格取得
・2011年:英国IFA国際アロマセラピスト連盟認定アロマセラピスト資格取得
・2018年:アットアロマ アロマ空間コーディネーター資格取得
Webサイト
elenaroma /aromatic design
お問い合わせ
elenaroma66mitsui@gmail.com
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