アンチエイジングニュース

口腔ケアとアンチエイジング

近年、日本においても口腔の重要性がメディアでも取り上げられることが増え、一般方の口腔への関心も少しずつですが高まりつつあります。
しかしまだまだ日本はデンタルIQ(歯科知識)が欧米諸国に比べ後進国であることは残念ながら否定できません。ですが口腔機能が口だけにとどまらず全身に関与し、認知症、糖尿病、心臓疾患、血管障害、リウマチ(免疫疾患)、アレルギー、アトピー、様々な疾病に関わっていることが研究結果から判明し、口腔機能を正常に保つことが「健康に老いていく」上で重要な役割を担ってきていることがわかってきました。人生の後悔健康部門のトップは「歯を大事にしなかったこと(70代)」。
(雑誌プレジデントより。60、50代においても3位5位と上位に挙がってきています)
これからのアンチエイジングとして「口」は大事なキーポイントになってくるでしょう。

◎口と認知症が関連する?
アルツハイマー型認知症の原因とされているアミロイドβタンパクという物質があります。研究では歯のないマウスにはアミロイドβタンパクが沈着し、脳内に老人班が多数発生みられ海馬の細胞数が少ないことが分かりました。(海馬とは入力された情報の整理・記憶を司っている脳内の器官です)結果から分かったことは歯が無いと咀嚼によって脳の中枢神経が刺激されずアルツハイマー型認知症のリスクが高くなるということでした。一昔前では認知症の方の口腔内を調べると歯のない方が多く「認知症になったために清掃が出来ず歯を失っている」と思われていましたが、現在ではアルツハイマー型認知症と歯の欠損の因果関係が明らかになってきました。

◎口が原因でサルコペニアに?

ロコモとは身体を動かす筋肉・骨・関節が異常をきたし日常生活が困難になり、悪化すると要介護・寝たきりになる現象をロコモティブシンドローム(略称ロコモ)と言います。サルコペニアとはサルコ(筋肉)ペニア(減少)のギリシャ語から筋肉量減少と筋力低下を認める現象のことを言います。ロコモは認知度が高い言葉ですがサルコペニアはロコモに比べると認知度はそれほどでもありませんが、サルコペニアは30代から始まると言われているので軽視はできませんね。そのサルコペニアが何故「口」と関係するのでしょうか?ヒトの歯は28~32本。その重さは32本合わせても概ね35~40gしかありません。たった35~40gが無くなっただけでヒトの頭蓋骨は大きく変貌を遂げます。
歯が喪失すると筋肉が減少し結果骨も減少してゆきます。脳の容積も影響を受けてしまいます。たかだか歯がなくなっただけではすまされないことに繋がっていくんですね。噛むという行為は頭部の筋肉を維持する上で大切な役割を担っているんです。

◎歯があっても認知症のリスクはなくならない不思議

歯が無くなると認知症のリスクが高くなるお話でしたが、実は歯があっても認知症のリスクが同じ場合があります。それはどんな状態かというと…
噛みあわせが悪く上下の歯がきちんと噛み合っていない場合といえます。歯の根の部分(歯根)は顎の骨の中に埋まっています。歯と顎の骨とが直接くっついているのではなく「歯根膜(しこんまく)」という線維が歯と骨をつなぐ役割をしているのです。歯根膜は噛んだ時の衝撃を和らげたり「感触」を感知する役目なのですが、この歯根膜が脳へ刺激をおくっているのです。噛みあわせは(歯並び)は見た目だけの問題ではないのです。歯があり、よく噛んで脳トレ効果を期待したいですね。

◎ガムでトレーニング
よく噛むことが脳への刺激になることがわかり、最近では嗜好品としてガムの購入だけではなく「脳トレ」として購入も少しずつですが増えているそうです。歯科医院では噛むトレーニング用の「噛み応えのあるガム」が販売されているクリニックも増えていますので専門家のアドバイスを伺って個人其々の口腔状態にあったガムを選択して貰いましょう。

小野塚 實先生著 (噛むチカラで脳を守る)より

高齢になってくるほど咀嚼による脳の刺激をうけやすいことを示している画像です。中段は60代下段は70代です。

◎インプラント・入れ歯で期待できる脳への刺激
歯を失うことで歯根膜から脳への刺激が遮断されてしまいますが
インプラント(人工歯根)や義歯(入れ歯)を入れることでも脳へ刺激が届くことが研究により判明しました。歯を失ったままにせず、上下の歯がバランスよく噛めることが何より一番大事なんですね。

◎まとめ
「咀嚼によって脳は刺激をうける」
「歯の数が少ないと認知症のリスクが高い」
「噛まないとアミロイドβタンパクが沈着しやすい」
「インプラントや入れ歯でも脳は刺激できる」

上野 清香(UENO SAYAKA)

ナチュラルビューティ研究所(ナビけん.com)代表
上野歯科医院副院長
抗加齢医学会専門指導士
顔ヨガ講師
フェイスストレッチ講師
メディカルデンタルエステティシャン講師
ドライマウス専門指導士
英国予防医学機関公認フェイスエクササイズトレーナー
重太みゆき公認M.snow(R)スマイルトレーナー

》健康・美をナビゲートする『ナビけん.com』

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