アンチエイジングニュース

【特別企画】専門家が男女の「なぜ?」に迫る Vol.9

熊本悦明(札幌医科大学 名誉教授)×二松まゆみ(恋人・夫婦仲相談所 所長)特別対談

男女の関係はいつまでいってもわからないもの。
夫婦仲、恋仲に悩む女性会員1万3千名が集まる「恋人・夫婦仲相談所」所長の二松まゆみさんを迎え、男女の「なぜ」に迫ります。

■スキンシップでオキシトシンを出そう

二松 日本の場合は未婚でも既婚でも男性はアダルトビデオが好きな方が多い。たとえば駅で売っている夕刊紙とかスポーツ紙には、そんな写真と記事がたくさん掲載されているし。あと男性週刊誌が売れているのはセックス特集が充実しているからって言われている。日本人はコミュニケーションに気を遣わなくていい、アダルトビデオとか風俗が好きなんじゃないかと思うんですけど。

熊本 ある意味において、行動力と関係した少しゆがんだ文化だと思います。僕がアメリカの大学病院に留学したときに、はじめは大学の寮に泊まっていたんですが、日曜日に病院の中庭に出たら、看護婦さんたちが裸で日向ぼっこをしてるんですよ。そして普通に抱き合ってキスしたりしている。もう一つ驚いたのは運転していたら前の車が止まるごとに助手席の彼女とキスしてる。外国はスキンシップとかが日常的にあるからアダルトビデオとかにいかないで現実的にエンジョイしてるのではないですか?日本的な隠す文化の歪んだ現象と思っております。

二松 そのスキンシップとかキスからの流れでセックスも自然になるけど、日本人の場合スキンシップ文化が無いのでそうならない。外国の人は同性どうしでも、ハグしたりしますもんね。その違いは大きいかも。

熊本 つい先日、昔から親しい友人夫婦が来日して、友人は「いやぁ久し振りだ」って家内にハグしてきた。僕も彼の奥さんにそれをやらなきゃいけないと思いつつも、僕はそういうことできないので困りましたね。

二松 無理無理。やっぱりこれは文化ですよ。古代から受け継がれたDNAの違いでもあるかもしれません。

熊本 せいぜい握手ぐらいなら普通にできるけど。人間的な表現を自然に出せない控えめな表現を抑える日本文化は国際的には孤立していますね。会った時、別れの時に外国人は必ず握手をしてますね。日本人は頭を下げるだけで人間味がない。

二松 日本はスキンシップが少ない文化ですから、その流れでセックスに持って行くのは難しい。外国の人の場合はスキンシップから流れて脱がせていきましょうなのかな。日本人はそこの流れができない。

熊本 僕はとにかく握手だけは必ずやるようにしています。日本人は男同士だって握手しない。まして女の人と握手するシーンなんて非常に少ない。とにかく手をつなぐとか肩を抱く、握手をするとか国際的に新しい時代に適したもっとスキンシップを大事にする習慣を身につけていくようになるでしょうが、大きく言えば、西洋人の方が東洋人に比べてより動物的生き物と言えますね。その中で東洋の一番東にある日本が最も植物的人種なのでしょう。

二松 本当にそうですね。外国では男同士でさえ「やあ飲もうか」みたいにハグしてますけどね。

熊本 じつはスキンシップっていうのはオキシトシンっていうホルモンが出るんですけど、ご存知でした?

オキシトシンは女性ホルモンの刺激で合成される1種で内向きの神経内分泌物質なのです。女性(女性ホルモン)は内向きの生理の中でオキシトシン促進作用を持っている。男女か量の差はあるが、これを持っていることの生物としての意義は非常に大きいわけですよ。女性ホルモンはオキシトシンと直接つながっていると考えていい。そのオキシトシンはスキンシップで沢山出る。そして心を和ませる。
それで、話はちょっとずれるかもしれないけど、最近、老人ホームに行ったときに、老人に対して何をしてやれば一番いいか、よろこばれるかというと肩揉んで触ってスキンシップを持つのが最高なのです。

二松 触ってあげるんですか。

熊本 そう、触ることがすごくいい。触られるってことによってオキシトシンが出るから心が安らぐんですよ。オキシトシン文化があるかないかっていうことはすごく重要です。

二松 男女関係なくてもオキシトシンは出るんですか。

熊本 はい。でも男性でも、女性よりは少なくてもスキンシップを持つとオキシトシンが出てくる。男にも女性ホルモンが少ないながらありますので。ただ興味あることは、女性が閉経後女性ホルモンが激減してあとは、同じ年の男性の方が女性ホルモンが多いので、年を取ると男性がやさしくなるのはその為と言えます。男性はオキシトシンが多くなり優しくなる訳です。

二松 オキシトシンも結局ホルモンの一種になるんですよね。

熊本 女性ホルモンの作用で脳から出る神経内分泌物質なのです。

二松 この前テレビで、男性の浮気をやめさせるにはオキシトシンを鼻から霧にして吹き込むと、浮気をしなくなるっていうのをやってました。関心が外ではなく内に向くっていうことなんでしょうね。

熊本 そうです。女性にふれるともっと優しくなるとされていますよね。

二松 普段の生活でオキシトシンを高める方法ってあるんですか。

熊本 それはやっぱりスキンシップでしょう。自分のパートナーとスキンシップをすることで浮気しにくくなるんです。

二松 じゃあ奥さんが旦那さんにスキンシップをしていれば浮気しにくくなるんだ。私は夫婦間のセックスの重要性っていうのをよく言っているけど、今の日本の夫婦ってセックスもしないけどキスもハグもしないからセックスレスになりやすいと感じています。結婚して子どもが2人3人できてしまうと、もう肌の触れ合いがほぼ皆無なんです。子供の抱っこはだくさんするけど、奥さんの抱っこをしない。

熊本 そこでさっきから言っているように旦那に自分を注目させる、アドベンチャースピリットを掻き立てるような努力をしなくちゃダメなわけですよ。外国なんかは奥さんがかなり綺麗にしてますよ。アメリカの留学中に見た話ですが、昼間プールサイドで水着で泳いだり、だらしない格好で本を読んでいた奥さんが、夕方、夫が帰る前に家に帰り、かなり身ぎれいにして待って、抱きついてお帰りといってましたね。

二松 確かに。下着とかにも気を使っていますよね。

熊本 男性もそれなりの努力すべきにしても、女性はオキシトシンとスキンシップ。男性は男性ホルモンにつながる元気さとアドベンチャースピリット。要するに外向きのアクション。お互い、そのアクションをどこに集めるか、どういうふうに集めるかっていうのが一つの男女間問題だし、女性の方から言えばその集め方が上手いか、下手かによっていろいろ言ってることを満足させるかさせないかになるわけ。
二松 「スキンシップしましょう」っていうことはやっぱりいいことなんですよね。

熊本 ただある雑誌のインタビューでもいったんですけど、年寄りがセックスするっていうことは元気になって長生きするといいますが、そういう行動を取れるだけのアドベンチャースピリットを持てるようになるような男性ホルモンがあるかどうかを、まず考えてほしいということが重要なので、その活性力があっての上スキンシップですることもでき、オキシトシンも出てくるから、結果的に精神的にも落ち着き、元気に長生きもする。
二松 長生きできるっていうことですよね。

熊本 男性側からみれば、まず男性ホルモンありきなんだよね。女性も受け身だけだったら男性ホルモンは要らないけど、ポジティブに動こうとしたら男性ホルモンが必要。またあとは受け身の形としても、自分も満足し相手も満足する。女性はオキシトシンが出るような生理管理も必要で自分の健康管理をすべきだと。

二松 だからオキシトシンはすごく大事なキーワードであるんですよね。私も「スキンシップをしましょう」って言い続けているんですよ。私の場合、セックスは挿入ありきっていう概念ではないんです。日本人の場合はチュッチュッっていうちっちゃいキスからハグすら全くできないので。まずその旦那さんとかカップルでマッサージしたり、とにかく触れ合うことからやりましょうって言ってるんですよ。

熊本 キスすることにこだわらなくても、顔を合わせることが大事。日本人は、そういう習慣すらないから「キスの仕方さえ知らない」わけです。生活習慣、文化っていうのは非常に重要なことなんです。

二松 セックス以前のコミュニケーションをもっとできるようにっていうことですね。日常の会話は基本ですけれど。

熊本 外国だと出かけるときにキスや頬を寄せることをする。これはわりと自然であり、旅行に行くのでなくて毎日の出勤のときにでも、通常の習慣ですよね。そういうようなスキンシップが重要なんです。それで体温のある生き物としての仲間意識・親密感が出る訳です。それがないのに急にセックスしろって言ったら、それだけではただの性欲でしょ。その為セックスの意欲がちょっと落ちて衰えてくれば、ぜんぜんしなくなるのは当然のことと思えますね。

二松 だから、その前段階をもう少し鍛えないと日本人はなかなかセックスにまで持ち込めないのね。

熊本 そう。まずは旦那が出かけるときはせめて頬を寄せ「行ってらっしゃい」っていう。帰って来たら抱きついてみて「今日はご苦労さま」っていうぐらいの関係になれば、セックスレス問題がかなり少なくなるんじゃないかと思うんですね。それに美しいねと思はせる。それができればですけど。女性は少し年配になるとそんなのめんどくさいと思うのではないでしょうか。セックスレス夫婦ではそれが無いのでは。

二松 そうですよね。コミュニケーションが不足しているから、なかなかセックスまで持ち込めなくて、アダルトビデオとか風俗に流れているともいえますよね。奥さんがあまり魅力的じゃないからセックスする気にならない。だけど片方ではアダルトビデオはハイクオリティー。とってもきれいな女優さんがさまざまな姿で興奮させてくれます。「え?そこまでして見せてくれるの?」というくらいエッチです。風俗も世界に誇る風俗街があるから行ってしまう。だから日本の場合はマスターベーションで処理する男性が多いのかな。

熊本 僕それはそういう調査してないから分かんないけども。

二松 私は実際に奥さん方からきいているし、実際の厚生労働省のセックスレス調査でもセックスしない理由の1位が面倒臭いなんですよ。面倒くさがって自分で処理してしまう。

熊本 今の人は人間の交流っていうのを面倒くさがる傾向にあるのかもしれないね。マスターベーションで済ませれば非常に合理的といえば合理的でしょうね。ただやはり、男性側の総合的な男性力が落ちてきていることがかなり多いのではないかと思っております。セックスレス男性の男の生理朝だち問題も是非検討したいですね。
話は変わりますが、最近自閉症の人にオキシトシンを投与すると、愛情ホルモン作用で、人との触れ合いに関心が出て、自閉症が治ってくるという研究が報告されています。オキシトシンが人との交わりの核心になるとも言えると思いますね。

これまで「男性とは何ぞや」ということを男性ホルモンを中心に紐解いてまいりました。
皆さん、いかがでしたでしょうか。
なぜ男性があんな行動をするのか、こんな考え方を持つのか、少しでも理解していただければ幸いです。

>>>『Dr.熊本×二松まゆみの男女の「なぜ?」に迫る』バックナンバーはこちら

 

熊本 悦明(くまもと・よしあき)
日本 Men’s Health 医学会理事長、札幌医科大学名誉教授

東京大学医学部卒業。東京大学講師(泌尿器科学講座)を務めたのち、札幌医科大学医学部泌尿器科学講座主任教授。男性医学・泌尿器科外科学・尿路性器感染症学を中心に研究を進め、日本 Men’s Health 医学会及び日本性感染症学会を創立している。
その後、(財)性の健康医学財団会頭を経て、現在、札幌医科大学名誉教授、(財)性の健康医学財団名誉会頭、NPO法人アンチエイジングネットワーク副理事長、日本抗加齢医学会顧問、日本思春期学会顧問、日本性機能学会名誉会員など

【受賞】
保健文化賞、志賀潔・秦佐八郎賞
日本泌尿器科学会:坂口賞・鈴木賞

HP:日本臨床男性医学研究所


二松 まゆみ(ふたまつ・まゆみ)

元主婦マーケティング会社経営。夫婦仲、恋仲に悩む女性会員1万3千名を集め、恋人・夫婦仲相談所 運営。所長を務める。「セックスレス」「理想の結婚」「ED」のテーマを幅広く考察。恋愛・夫婦仲コメンテーターとして活躍中。著作、講演、メディア取材多数。NHK離婚特集番組、セックスレス問題を考える番組等に出演。

【著書】
『ニッポン男子の下半身が危機的なことに気付づいたワタシ』(扶桑社新書)
『夫とは、したくない。』(ブックマン社)他多数。
新刊『40歳からの女性ホルモンを操る53の習慣』(扶桑社)

HP:恋人・夫婦仲相談所
ブログ:『すずねドキドキブログ』

 

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