アンチエイジングニュース

「カロリー制限が長寿の鍵」
――ハセ博士のヘルシー情報最前線(418)

昔から、腹8分目あるいはそれ以下の方が、健康で長生きできるとよくいわれます。
実際に、今までの多くの研究でも、カロリー制限をすると動物の寿命が延びることが報告されています。

しかし、その生物学的な理由については、よく分かっていませんでした。 ところが最近の研究によると、成長ホルモンやインシュリンが、カロリー制限した際に長寿にさせるキーとなる因子であることが明らかになっています。

これは、南イリノイ大学のAndrezej Bartke博士らが、権威ある全米科学アカデミー紀要誌(Proceedings of the National Academy of Sciences)に発表したもので、製薬業界をはじめとした様々な業界から注目を集めています。

研究ではまず、正常なマウスにカロリー制限食を与えると、実際に長生きするかを調べました。
その結果によると、雄の正常マウスではカロリー制限食で19%、雌の正常マウスでは実に28%も生存期間が伸びたそうです。

次にカロリー制限食にした際、成長ホルモンやインシュリンに、長寿をもたらす効果があるかを調べるため、成長ホルモンを欠損したマウスを用いて研究しました。

この遺伝子欠損マウスは、成長ホルモンに対する受容体を作ることができず、成長ホルモンに非感受性(耐性。成長ホルモンの影響を受けない)となった変異マウスです。

この変異マウスにカロリー制限をおこなったところ、正常マウスでは長寿になったのに対して、変異マウスではそのような効果は全く現れなかったそうです。
また、正常マウスにカロリー制限食を与えた場合は、インシュリン感受性が高まるのに対し、変異マウスではインシュリン感受性も高まらないことも確認されました。

すなわち、正常マウスはカロリー制限の効果が出て、インシュリン感受性が高まり、その結果長生きできるようになるのに対し、成長ホルモンに非感受性の変異マウスはインシュリン感受性は高まらず、カロリー制限食をしても長生きできるようにはならなかったわけです。

これらの結果から、成長ホルモンの受容体の作用で連動する様々な生理活動が、老化の抑制や長寿に重要なことが示唆されます。

そして、インシュリンの作用を高めることは、老化を抑制して長寿とするのに重要であり、それにはカロリー制限食が効果があると結論しています。

ところで、この研究から成長ホルモンやインシュリンのシグナル伝達過程が、抗老化薬の開発のターゲットとなることが考えられますので、それを用いて夢の抗老化薬を開発しようと、製薬企業は注目しているようです。

つまり、適切な抗肥満薬を開発すれば、長寿の薬にもなりうるというわけで、大ヒットが間違いない薬が出来るかも知れないということです。

ハセ博士=薬学博士。国立大薬学部や米国の州立大医学部などで研究や教官歴がある。

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