アンチエイジングニュース

「免疫力の弱い人の方が、長生き出来る?」
――ハセ博士のヘルシー情報最前線(379)

免疫は、体に入ってくる様々なものに対する自己防衛反応で、細菌やウイルスなどの感染を防いだり、食べ物や呼吸と共に入ってくる外敵をやっつけます。
このため、免疫力を高めることが強い体を作り、長生きする秘訣と考えられています。

ところが、現代のように衛生状態が良く、抗生物質によって感染症の脅威から守られている社会では、逆に免疫力が弱い方が長生きには有利なのだそうです。
これは、イタリアPalermo大学免疫老化学教室のCarmela Rita Balistreri博士らが、米国医師会誌Journal of American Medical Association(JAMA)に報告したものです。

内容は分子生物学的な用語が多いためわかりにくいと思いますので、簡単に要約してお伝えします。

研究では、100歳前後の健康な百寿者と、より若い人で病気の人、および健康な若い人の遺伝子配列を調べ、免疫力との関係を調べました。
その結果、健康な百寿者に免疫応答が弱くなるような遺伝子変異を持つ人が多いことが分かったというものです。

研究では、細菌等が体内に入ると活性化する、Toll様受容体を構成するタンパク質の遺伝子配列(Asp299Gly多型)を調べました。
この遺伝子配列を持つ人は、体の炎症反応が弱く、細菌などにも感染しやくすくなることが知られています。

この遺伝子配列を、急性心筋梗塞の患者さん(平均41歳の男性105人)、ほぼ同年齢の健康な男性(127人)、及び平均年齢100歳の健康な男性(百寿者55人)の3群について、遺伝子配列を調べ比較しました。
その結果、急性心筋梗塞患者では、健康な人よりもAsp299Gly多型が少なく、百寿者では逆に多いことがわかりました。
喫煙、肥満、家族歴などを勘案しても、やはり百寿者では患者群や対照群よりも、Asp299Gly多型が多かったとのことです。

以上の結果から、感染の機会が少なく、仮に罹患しても抗生物質によって重症化を免れることができる現代社会では、Asp299Gly多型は、むしろ長寿に有利に働くのではないかと考えられるとしています。

ところで、免疫力が強すぎたり、免疫力の調節がうまくいかないと、リウマチや膠原病といった自分自身を攻撃する自己免疫疾患が発症します。また、アレルギー反応が強く出すぎたりすると花粉症などになります。

ですから、単に免疫力が強いとか弱いというよりも、通常は静かに体の異常を監視しており、いざ外敵が来た時に的確に攻撃する、いわば自衛隊のような免疫の調節機構が一番重要な気がします。

ハセ博士=薬学博士。国立大薬学部や米国の州立大医学部などで研究や教官歴がある。

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