アンチエイジングニュース

「カロリーをホンの少し減らすだけで、長生き出来る。」
――ハセ博士のヘルシー情報最前線(346)

古今東西、長寿の方法が捜し求められてきました。しかし、最も確実で、科学的に証明されているものは、“食べ物に注意し、特に摂取カロリーを制限すること”とされています。
これは1930年代以来様々な研究によりに分かってきたもので、犬から粘菌まで様々な生物の寿命を調べた研究で、カロリー摂取を通常の半分に減らすと、30%~70%も寿命が延びることが知られています。
また、人の場合にはそのような科学的な証明は難しいのですが、古来よりカロリー制限や粗食が寿命を延ばすといわれてきています。

しかし、そのためには食べ物を我慢したり、苦しい絶食をしなければならず、それまでして寿命を延ばすことは嫌だという方も多いと思います。
ところが今回ご紹介したいのは、通常よりカロリー摂取をわずか5%下げるだけで、寿命が明らかに延びるというニュースです。

これは、カルフォルニア大学バークレイ校のMarc Hellerstein博士らが、米国生理・内分泌・代謝誌(the American Journal of Physiology-Endocrinology and Metabolism)に報告したものです。

研究では、水分子のうちの水素原子を、重い同位体で置換された重水素をマーカーとして用いました。
この重水素をマウスの食事に混ぜ、それぞれの組織のDNAにどのくらい取り込まれるかを調べたそうです。

まず最初に、マウスがいくら食事をしても良いようにしておき、次いでその食事のカロリーを95%になるように調整して、DNAへの重水素の取り込み速度を調べました。
その結果、カロリー制限をした場合には、細胞分裂のスピードが37%も低下しており、がん等を起こす遺伝子の変異率が明らかに低下することが分かりました。
遺伝子の変異率が上昇すると、細胞には様々な悪影響が出てきます。例えば、がん細胞は遺伝子変異が多く起こった結果に生じるものです。
通常の正常細胞は、DNAが変異してもそれをもとの正しいDNAに戻す修復系と言われるシステムがあり、なかなか がん にならないような安全弁となっています。

ところが、あまり細胞分裂のスピードが速いと遺伝子修復系が働けなくなってしまいます。そのため、遺伝子異常が生じて、がんや老化が起こりやすくなると考えられています。
つまり、カロリー制限をすると細胞分裂の速度が低下し、遺伝子修復が効率よく起こるために、老化が抑えられえることが期待できるわけです。

今回の研究はマウスを用いたものですが、今までのカロリー制限に関する実験結果は単にその動物だけでなく、様々な生物にも当てはまることが知られています。したがって、今回の結果も、人に適応できるのではないかと期待されます。

皆様、あまり飽食することなく、ホンのチョツピリでいいですから、カロリーを減らすことを心がけてくださいませ。

ハセ博士=薬学博士。国立大薬学部や米国の州立大医学部などで研究や教官歴がある。

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