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「結婚すると心臓病のリスクが低下?」
――ハセ博士のヘルシー情報最前線(397)

心臓病は、日本人の全死亡順位としては、がんについて第2位を占めています。
なかでも、狭心症や心筋梗塞のような動脈硬化が原因の虚血性心疾患が増えています。

今回、このような「急性冠症候群」(ACS)の発症リスクは、独身者よりも既婚者のほうが低く、回復する割合も高いことが明らかになりました。

これは、フィンランドの研究チームが欧州心臓病予防学ジャーナル(European Journal of Preventive Cardiology)に発表したものです。
(論文タイトル: Prognosis of acute coronary events is worse in patients living alone: the FINAMI myocardial infarction register / 著者: Aino Lammintausta他 / 医学誌名: European Journal of Preventive Cardiology, 2013; 2047487313475893, first published on January 30, 2013)

研究では、フィンランドで1993年から2002年に急性冠症候群の症例を調査したデータをもとに、心臓発作などの急性冠動脈事象を経験した35~99歳の1万5,330人について調べました。
ちなみに、発症から28日以内の死亡数は7,703人だったそうです。

次に既婚、未婚の別でみると、急性冠動脈事象の発生数は全ての年齢層で独身男性の方が既婚男性よりも58~66%高いことが分かりました。

さらに、女性の場合では婚姻の有無の差は男性よりも拡大しており、独身女性の発作の割合は既婚女性より60~65%高かったそうです。

また、急性冠症候群による死亡率も、男女ともに既婚者の方が低いことが確認されました。

実際、発作から28日以内に死亡する確率は、既婚者と比較して独身男性が60~168%、独身女性は71~175%高いことが分かりました。

既婚者では急性冠症候群による死亡が少ない理由として、結婚して家族と同居していると、緊急の場合に必要な対応を迅速に得られやすくなることがまず考えられるとのことです。

特に結婚や同棲をしている中年の男女では、心臓発作を起こし病院に搬入された場合の生存率が高く、予後診断も良好である傾向があったそうです。

すなわち、自分の健康について心配し注意を払ってくれるパートナーがそばにいると、健康状態が改善しやすく、治療をおこなう上でも、家族の支援を得られるかどうかでその結果が大きく異なるというわけです。

また、結婚している人の方が心筋梗塞や狭心症の治療薬の服薬状況が良いことも理由に挙げています。

もちろん、結婚生活がもたらす充足感や幸福感といった心理的側面も軽視できません。

独身者は抑うつ的な気分になりやすく、心血管疾患の死亡率に影響を及ぼすことが以前からわかっています。

結婚生活は、我慢の連続のように悪く言われますが、必ずしもそうとばかりではないようですよ。

ハセ博士=薬学博士。国立大薬学部や米国の州立大医学部などで研究や教官歴がある。

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