アンチエイジングニュース

アンチエイジング対談【永遠に美しく…】後編

  • facebook Share
  • Tweet
  • LINE

第2回アンチエイジングシネマ対談―後編

― 西洋と東洋の違い ―

塩谷先生(以下S):「もうひとつは日本ではそういう言葉はないけれどGerontophobia(ジェロントフォビア)。老年恐怖症。老いることに対する恐怖。その反対がユース・カルト、若さの礼拝。老いは自然現象として認めざるをえない半面、やっぱり深層心理としてジェロントフォビアというものは共通で持っていると言える。それがどうして生まれたかは別として、そのために単純化して言えばアンチエイジングということが生まれてきている」

記者(以下K):「東洋の方が尊老性は高いのですか?」

S:「昔は女の人が年を取って柔和になると受け止めていたけれど。ふたつみっつ理由があって、カルチャーといえばそれまでだけど、日本人の場合は骨格が平らで、西洋人は彫りが深いから、年とるとそれが仇になって鬼婆みたいな顔になっちゃうんです。柔和にならない。皮膚も西洋人のほうがたるみやすい。東洋にはだいたい老人を尊敬するというのがあった。西洋の方はまったく実力主義で、機能が衰えればクズになっていく」

K:「ハートがない感じ?」

S:「アメリカは極端なケース。いい意味で若い時は実力主義だけど、年を取ることはマイナスなだけ。この本でワイルは「西洋は東洋から色々学ぶべきことがあると」書いている。その一番いい例として日本にくると屋久島に行って屋久杉をみて感動して帰るそう。ウイスキーでも年代物っていうのが尊重されるけど、人間だけが年とるごとに軽蔑されてクズになってという文化がいかがなものかと」

K:「私は小学校の道徳で、年上の人を敬いなさいという教育を受けたのですが、今もあるのでしょうか?」

S:「ないでしょうね。そういう教育まだありました?いつごろ?」

K:「70年代初めかな。一個でも年が上の人は敬うっていう教育はされてないんですかね」

S:「僕は戦後すぐ変わったのかと思った。残っていたんですね。ある意味で昔の日本のほうが1歳でも上なら絶対的にいうことを聞かなきゃならない極端な社会だった。その反動が現代にきたということもあるんでしょうね」

K:「例えば学生の頃の部活動だと、先輩には絶対に逆らえなかった。反動なんですかね?」

S:「いわゆる体育系のそういうのは別問題かもしれないけど、日本では今になって見直されている年功序列ですね。実力とは関係なく、年とればそれだけ給与があがる、立場も上にあると。で、それをひっくりかえして今度は今ちょっと行きすぎたと言っているわけです。だからワイルなんかむしろ、アメリカはずっと実力主義の社会だったから、老人の場合の知恵を生かそうと、社会心理学者を始め多くの人が訴えはじめている。抗加齢と関係して、機能は全部落ちるけれども、知恵とか英知という経験によって積み重なっていくものを尊重し活用すべきで、老人も主張すべきたと」

K:「そうですね。年功序列がなくなって日本の社会が大きく変わったかもしれない」

S:「年功序列の弊害もあった。だから僕も年功序列というわけじゃないけど、高校の頃から1日も早く日本を逃げ出したかった。大学行ってすぐ渡米しちゃった」

K:「日本から出たかったんですか?」

S:「うん!それでアメリカに行ってその志向に磨きがかかったから、日本に帰ってきて馴染めなくなっちゃった!(大爆笑)だから未だにキザな言い方かもしれないけど、死ぬ時はアメリカの空の下で死にたい。だって息がしやすいんですよ」

K:「どの辺が合うのですか?そして日本のどの辺がダメなんですか?」

S:「なんかね同じ人間どうして喋っているという感じがしない。日本いると頭の中に、抵抗回路が入っている。思ったことそのまま口にも出せないし表情にもだせないわけです。アメリカにいると、感じたとおりの表情で感じたとおりに言えばいい。それでぶつかっても、後でまた互いにわかりあえるし仲直りする。日本の場合には、初めっから紗がかかっている。だから患者でも、アメリカなら手術が上手くいけば喜ぶし、悪くいきゃ文句言われる。日本の場合にはいつも「ありがとうございました」って。本当に満足してくれているかいつも不安で。その話をアメリカに帰って精神科の友達に話したら「そりゃあ、お前のストレス、そうとう重症だな~」なんて言われて」

K:「塩谷先生は英語と日本語をしゃべる時では性格的なものを変わってきますか?スイッチが切り替わるという感じですか?」

S:「でしょうね。別に僕はアメリカで生まれ育ったわけじゃないから、英語が本当に喋れるわけじゃない。でも例えそれが5.6割でも、日本語よりはずっと気分的に楽。また、アメリカの友人に言われた話だけど、日本からアメリカに戻ると「お前疲れるだろう」と聞かれ「疲れるよ、でもなんでかわるのか?敬語を使ってるから?」と答えた。すると「敬語とか以前に、日本ではお前は相手に寄って声音を変えるだろう」と言われて、ずいぶん鋭いなと思った。アメリカにいれば、極端にいえば相手が大統領であろうがエレベータボーイであろうが、まず両方とも同じ人間だという共通認識がある。日本の場合にはまず立場がある。それによって全てが支配されている。名刺を見る。だから相手に対して人間としてじゃなくて、何々教授、何々会社の何とかというものに対して話ているわけ」

K:「そうですね。だから、社会的立場を剥奪された団塊の世代の人は、やる事もない、誰にも認められなと、鬱症状になる方もいらっしゃるのでしょうか」

S:「だからアメリカの場合、ことに医者の仕組みが違うからだけど、教授とかも関係ないし誰も気にしないし、知らないわけですよ。全部ドクターなわけ。あとはその人がどれだけ専門医の資格を持ってるか、腕があるかが問題なのです」

― 日本とアメリカでの経験 ―

S:「 アメリカの場合実力主義だから若いほどいいわけです。日本の場合は違う。僕は学生運動に加担したけど、僕だって年とれば必ず改革に反対するようになるわけ。反対できるのは今のうちと思った。年とれば日本のほうが住みやすくなる。仕事しないほど日本は出世できる。そういう国だってことをわかって変えられるのは若い内でね、年とると絶対変えないもんですよ。未だにこの話になるとかっかきちゃう。これが一番アンチエイジングになってるのかもしれない(苦笑)。もうひとつはですね、まったくこの映画と離れちゃいますけど、アメリカ行って体験して良かったと思うのはさっきいった人間はみんな共通、ベースは共通、同じ人間だということですね。対女性に対しても。相手が看護婦であろうとなんであろうと区別はないし、まず人間であり女性である。別にみんなそんなこと意識して付き合ってるわけじゃないけど、日本からアメリカへ行って感じるのはそういうこと。だから、僕が一番苦手なのがいわゆる日本女性らしいの。わけわかんないから非常に付き合いにくい。だからはっきりもの言って反対してくれる方がずっと付き合いやすい」

K:「発言が曖昧なのは、日本人の思考でしょうか?」

S:「日本人は単細胞でもないと思うんです。アメーバーは少なくとも一人で動きますよね。日本人の場合はヒドラ。細胞と細胞の集合体。集合体でないと考えることも動くこともできない。ヒドラだったら、単細胞に脱分化して欲しい」

K:「ヒドラ的な感じかもしれないですね」

S:「でもそれが居心地いいのでしょうね。ちょうど、バイオフィルムという問題が出てるでしょう。バクテリアが自分達で固まっていろんなものをまわりに出してそれを防御膜にして、その中で一緒に生活することで、コロニーをつくっていき黴菌が増える。それが歯周病なんかの原因になっていく。今、日本人の場合、すぐに自分達でバイオフィルムつくっちゃう」

K:「そうですね、コロニーがいろんなところにある」

S:「それがないと居場所がない」

K:「元々単体で生きにくい性質を持っているから、老後ひとりで楽しめないことがアンチエイジングにも良くないと結びつけることはできますか?」

S:「かもしれないです。逆にアメリカのような単細胞が本当にいいのかどうか、自我の確立と言えば聞こえはいいけど、その個人主義というのはノイローゼにつながる」

K:「例えば、老人ホームじゃなく、老人ばかりを集めるコミュニティーみたいなものが、最近は増えてきていますが、ああいうのはどうなんでしょうか?」

S:「アメリカでももちろんそういうのはたくさんある。だからアメリカ人の場合には、はじめに個人主義があって、必要に応じてつるむ。その時にも、はじめっからのりを超えない。プライバシーに踏み込まないで、付き合えるわけ。だから例えば、パーティを開く時も、いろんな知らない人を集めるのがパーティの目的。日本はそうじゃなくて知人同士。しかも知ってない人だと名刺がないと通用しない。アメリカ人の場合には、そういう時に場合っていうのは、はじめての人とも共通の話題っていうのがいくらでもあるわけですよ。日本人は知った上でないと、話題が出てこない」

K:「大きな違いですね。それはやっぱり日本人がヒドラだからですね」

― 美容外科医はもてるの? ―

K:「映画の話に戻りましょう。他に塩谷先生が印象に残っていることとかありますか?今回はパロディですから深読みしなくてもいいでしょうか?」

S:「ですね。ただある意味で不老不死の馬鹿さ加減を表現しているけど、さっき気がついたけど美容外科医のパロディにされちゃってることはよくわかった」

K:「やっぱり、形成外科医はモテるのですか?」

S:「うーん。例えば、アメリカの結婚の契約条件としては、美容外科医っていうのはひとつのプラスにはなるかもしれないけれど離婚率は多い。アメリカ人の美容外科医の場合は」

K:「実際にこの映画の時にゴールデンホーンの実年齢は47歳です。若い!そして、CGはほんとによくできてますよね」

S:「よくできてると思います。どうやってんのかなーと思って。穴があいて向こうの世界が見える。首がひねるところも面白い」

K:「最後、身体がばらばらになっても喋る。あの先はどうなるのですか?」

S:「あれが不老不死なら、またつながっていくんのでしょうね」

K:「二人でいるからまだいいけど、ひとりぼっちだったら辛いな。最後に二人でかつて取り合った男性の葬儀で出て、彼はいい人生を送っていたとスピーチを聞く。不老不死を手に入れた二人は幸せじゃないというシーン」

S:「あれが、ひとつの答えでしょうね。作家自身の」

― やっぱり見た目のアンチエイジング? ―

K:「塩谷先生は見た目には騙されないタイプ?」

S:「誰でも二つある。綺麗なものが好き。昔、学生時代に、津田塾に合宿したことがあった。アメリカの団体が国際学生セミナーとかいって泊まりこみで来た。いろんな国のいろんな大学生がいて、男も女も。津田は女の学校だから、男便所がなかった!それは別として、一番良かったと思うのは、いろんな大学のいろんな人と若い時に交流できたこと。2週間だったけど、ほんとにいい経験。面白いことに、女も美人とそうでないのもいる。でもね、2週間もたたないうちに人気がでるのは、美醜関係なく性格のいい女性。一緒に生活すると性格がすぐでちゃう」

K:「やっぱりそうなんだ!!」

S:「建前じゃなくて、本音のところでみんなそういう風になってくる」

K:「ぱっとみは綺麗なものにひかれるけれども、そこじゃない評価も冷静に出てくると。
今のエピソードはお若い時ですよね」

S:「医学部の1年生」

K:「その時もやはり、かわいいとか綺麗とかより、生活すると大事なのはそこじゃないと」

S:「無関係とはいわないけど、全然優先順位が変わってくる」

K:「見かけも大事だけど、中身も大事っていうこと。どういうふうにまとめたらいいですかね」

S:「僕がいままでのいろんな考えの中でいってるように、不老不死なんてことはありえないし、みんなありえないということが頭の中にあるから不老不死ということを気軽に考えられる。あらためて考えてみれば、いろんな問題が生じる。で、そのひとつをパロディー化したのがこの映画ということになりますね」

K:「ありがとうございました」

⇒前編に戻る

(C) 2008 Paramount Pictures Corporation and Warner Bros. Entertainment All Rights Reserved

●いかがでしたか?みなさんもぜひ見直してください。

【作品詳細】
発売元:ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント
価格:1,500円(税込)
© 1992 Universal Studios. All Rights Reserved.

塩谷先生のブログ●毎日更新中!

  • facebook Share
  • Tweet
  • LINE

この記事が気に入ったら「いいね!」しよう
最新記事をお届けします

カテゴリ一覧