アンチエイジングニュース

「アンチエイジングの専門家がナビゲート」(ガイド:塩谷信幸)

最近「アンチエイジング」という言葉をあちこちで見かけるようになりました。
その旗振り役の一端を担っているものとしては嬉しくないわけではないですが、多少過熱気味なので、この辺で現状をクールに検証してみたいと思います。

 

まず、アンチエイジングとは

平たく言えば健康長寿であり、不老不死を目指すものではありません。
つまり老いと病気は区別して、老化は自然現象と認め、これといかにうまく折り合いをつけるかがアンチエイジングだと僕は思っています。
そうはいってもこの線引きは難しいし、アメリカなどでは老化は病気ととらえられています。老化をなくすことがアンチエイジング医学の使命だと、まじめに不老不死を目的に掲げているグループもあります。

今ひとつの気がかりは、アンチエイジングを打ち出の小槌と勘違いしている向きがあることです。事実、化粧品でもダイエット商品でも、アンチエイジングと銘打てば売り上げが上がるようです。

そしてアメリカでのサプリメントブームは異常ともいえます。
まず最新のテクノロジーで安くブツが造られ、そのセールスマンのような医者を養成して学会を作る。こうなるとも学会というより、巨大な展示会に盲腸のように研究会が付いたものになってしまっています。

そもそもアンチエイジングといってもまだ学問の体系をなしておらず、各分野の専門家が、自分の専門の延長線上に抗加齢を置いている状態で、その間の横のつながりが乏しいのです。
また、学問的な検証に乏しいという批判もあります。

たしかにいまはEBM、エビデンス・ベイスト・メディシンの時代、つまり実証に基づいた医療の時代といえます。
だがアンチエイジング・メディシン、すなわち抗加齢医学は代替医療、統合医療に繋がるものであり、そもそもこれらの医学が出現したのは、これまでの西洋医学の臓器別、分析的の手法が行き詰ったからなのです。
実証は必要ですが、いまの狭いEBMの手法にこだわりすぎると、角を矯めて牛を殺すことにもなりかねません。
この際新しいジャンルの医学にふさわしいエビデンスの捉え方が開発さるべきである、というのはやさしいが、では具体的にどんなものがと問われても困ってしまう状況です。

最後に述べたいのは、目的と手段を取り違えないようにしてほしいということです。最近発達したホルモン補充療法、抗酸化療法、免疫能活性化、これらはすべてアンチエイジング・メディシンの重要な柱です。しかし、どれも手法であり、手段の一つに過ぎません。

塩谷信幸

筆者の紹介

塩谷先生

塩谷 信幸(しおや のぶゆき)

NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長、北里大学名誉教授
東京大学医学部卒業。フルブライト留学生として渡米し、オルバニー大学で外科および形成外科の専門医資格を取得。帰国後、東京大学形成外科、横浜市立大学形成外科講師を経て、北里大学形成外科教授、同大学名誉教授。 現在、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療と研究に従事。日本形成外科学会名誉会員、日本美容外科学会名誉会員として形成外科、美容外科の発展の尽力するかたわら、NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長、日本抗加齢医学会顧問としてアンチエイジングの啓蒙活動を行なっている。

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