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ドクターに聞く【新型インフルエンザへの備え方】その1

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★マスコミの情報には踊らされるな

新型インフルエンザが、再度猛威をふるいはじめたという連日の報道合戦。急いで、マスクを買い足している方もいらっしゃるのでは?しかし、今回の新型インフルエンザの致死率(※原則として濃厚な治療を行わなかった場合の死者)は0.3~1.5%。通常のインフルエンザは0.1~0.5%で、比較するとやや高めではあるが、はしかが0.1~3.2%という数字をみれば、感染症の中では致死率が低く、正しい知識を持って備えれば、恐れることはありません。いたずらに恐怖をあおるメディアに踊らされるより、新型インフルエンザについての正しい基礎知識を持って備えることが大切。予防対策、感染した際の対処方法、そしてアンチエイジングの基礎でもある免疫力を高める条件について、医学博士の浜中聡子先生(AACクリニック銀座副院長、NPO法人アンチエイジングネットワーク顧問)に詳しく伺いました。

「新型インフルエンザの再流行に備えて」
★インフルエンザ<感染症>って?

インフルエンザウイルスが、主に大きな粒子である呼吸器飛沫によって、ヒトからヒトへ広がっていき、高熱、せき、咽頭炎、更には下痢やおう吐といった症状を引き起こします。いわゆる風邪と呼ばれる症状とは明らかに異なる重い症状に苦しめらます。1918年から1919年にかけて世界的な大流行となったスペイン風邪もインフルエンザ。毎年、冬季に流行する季節性インフルエンザも、それぞれのヘマグルチニン(HA)抗原とノイラミダーゼ抗原(NA)の変異によって型が異なり症状の強度も変わってきます。今回の新型(ブタ由来)インフルエンザウイスルはH1N1(※Aブタ亜型)。従来のA型ウイルスと比較すると、感染性は強いですが、病原性は弱いか同程度だと考えられます。推定される潜伏期間は、まだ明確になっていないのですが、1~7日間の範囲で考えられており、1~4日間の可能性が高いので、もしインフルエンザ感染者と接触しても1週間後何も症状が現れなければ発病の心配はいりません。新型インフルエンザ感染が確認された合併症を伴わない患者がこれまでに呈した症状は、発熱・悪寒・頭痛・上気道症状(咳、咽頭痛、鼻汁、息切れ)、筋肉痛、関節痛、疲労感、下痢があります。ニューヨーク市では、新型インフルエンザ患者の95%がインフルエンザ様疾患の診断定義(発熱及び、咳または咽頭痛)を満たしていました。※学校におけるブタ由来インフルエンザA(H1N1)ウイルス感染―ニューヨーク市、2009年4月

★新型インフルエンザにかかってしまったら?

病状が非常に重い場合でなければ、とにかく家庭で安静にすることです。自宅にある常備薬などで療養できる方は、診療所や病院に行く必要はありません。現在、流行している新型インフルエンザは、感染したほとんどの方が比較的軽症のまま数日で回復していますが、持病をお持ちの方や、症状が悪化する場合は、なるべく早めに医師に相談しましょう。また、もともと健康な方でも、嘔吐や下痢が続く小児や、胸に痛みが続くといった症状のある大人(症状の詳細は、厚生労働省HPを参照)も医療機関を受診してください。その際に、どの病院で発熱患者を診療しているのかを、事前に把握することが不可欠です。待たされたり、一般病棟で迷ったりすることは、感染を拡大する要因になってしまいます。発熱患者を診察している医療機関がどこにあるのかわからない場合は、保健所などに設置されている「発熱相談センター」に電話をしてどの医療機関にいけばいいのか相談してください。また、かかりつけの医師がいる方や、近くに発熱患者の診療をしている医療機関がわかっている方でも、必ず事前に電話をして診療時間などを聞きましょう。直接行かないように気をつけてください。

★迅速診断検査

では、季節性インフルエンザと新型インフルエンザをどうやって見極めるのでしょう。近年、臨床の現場で用いられている、インフルエンザ迅速診断キットは、呼吸器検体の中の季節性インフルエンザA型及びB型ウイルスの核タンパクを検出するものです。操作が簡単で判断時間が短いながら、A型インフルエンザ核タンパク抗原は、様々なA型インフルエンザウイルスに共通して保持されているので、呼吸器検体の中から今回の新型インフルエンザを検出できると考えられます。ですが、新型インフルエンザ感染の確定診断にはより専門的な検査が必要になりますが、迅速診断キットの感度も50~70%。特に、発生早期ではウイルスの量が測定診断キットで検出できるとろこまで増えていない場合に感度が下がるようです
前出したように新型インフルエンザ(H1N1)についての病状に関するデータはまだ利用可能ではないですが、合併症が季節性インフルエンザと同様であると考えていいでしょう。
慢性基礎疾患の悪化、副鼻腔炎、中耳炎、肺炎、気管支炎、ぜんそく発作、心筋症、心膜炎、筋炎、神経系疾患、トキショック症候群、二次性細菌性肺炎です。
また、新型インフルエンザの特徴として、高齢者の感染者が少ない点にも各国の研究者や保険機関は首をかしげています。これについては、WHOは5月19日付で、高齢者が新型インフルエンザ(A型H1N1)に対する免疫を獲得しており、血清中に中和抗体を形成していることが示されたと発表しています。この報告に関して、1957年以前に新型インフルエンザと同じH1N1型のスペイン風邪が流行していた関連があると推測されていますが、現時点では判定するまでには至っていないです。

★進行する場合は

科学療法剤を使用します。オセルタミビル(商品名:タミフル)とザナミビル(商品名:リレンザ)に感受性菌があります。ウイルスの毒性が増強し、A型ウイルスの20%は、タミフルへの耐性になっているとの報告もあります。アマンタジン(商品名:シンメトリル)とリマンタジン(国内未認証)には耐性菌があります。その際に最も注意しなければならないのが、10歳以下への解熱剤の投与です。アセトアミノフェイン以外はライ症候群(Reye’s syndrome※インフルエンザや水痘などの感染後、特にアスピリンを服用している小児に、急性脳症、肝臓の脂肪浸潤を引き起こし、命にかかわる原因不明で稀な病気)の発症を招く可能性が高いとされていますので、解熱剤の使用は慎重にお願いします。

★合理的な感染防止法は

多くの人と接触するバスや電車の中、あるいは病人を乗せることが多いタクシーも接触感染率が意外に高いですね。感染者の咳やくしゃみによってウイルスは、電車の手すりやつり革につきます。ステンレスの手すりよりプラスチックのつり革のほうに、ウイルスは長くとどまります。当然、服やカバンにもウイルスは知らず知らずのうちに付着します。しかし、大きな粒子である飛沫による感染伝播は、感染者と被感染者の濃厚な接触を必要とします。なぜなら飛沫は空気中に留まらず、空気中をごく短い距離しか飛ばない(通常約1.8メートル以内)からです。
汚染された手すりやつり革につかまったとしても、帰宅後に石鹸やアルコールにより、手を洗えば大丈夫。ウイルスがついた手で食べものに触ったり、目をこすったりすることが感染につながるからです。新型ウイルスの感染伝播に関するデータはまだ少ないながら、症例から考えると、全て呼吸器系分泌物と体液(下痢便)は感染源になりうると考えられるので、徹底した「手洗い」こそが、感染防止には有効です。
またマスクは、感染者のエチケットですが、未感染者の予防にはなりません。マスクに表面についたウイルスが口の粘膜から入るケースもあります。N―99マスクは、インフルエンザ・SARSなどに対応する医師等には必要ですが、普通の場合では1時間半もしていると呼吸が苦しくなってしまいます。
そして、免疫力を高めることは新型インフルエンザをはじめいろいろな感染症にさらされる現代社会においてはとても重要です。

つづく

浜中聡子 先生(医学博士)
●略歴
北里大学医学部卒業。北里大学大学院医療系研究科臨床医科学群精神科学修了。北里大学東病院精神神経科、北里大学病院救急救命センター、亀田総合病院精神科、国際医療福祉大学熱海病院精神科・講師などを経て、現在、AACクリニック銀座副院長。
●主な所属
日本抗加齢医学会、国際アンチエイジング医学会(WOSSAM)、米国抗加齢医学会(A4M)、米国先端医療学会(ACAM)、NPO法人アンチエイジングネットワーク顧問

 

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