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「アンチエイジングの専門家がナビゲート」(ガイド:熊本悦明

更年期から熟年期への健康管理の重要性を説明する

 

§更年期から熟年期への連続した健康管理
 更年期の意義は、現代における人生の折り返し点であると前項で説明しておきましたが、これが今や21世紀医学として、臨床的に非常に重大な意味のあることなので、もう少し説明を付け加えたいと思います。
 
 更年期が人生の変わり目(change of life)と受けとられているのは当を得た理解なのですが、思春期に対して思秋期という表現で良く使われ、いまも更年期をネガティブに受けとる人々が少なくありません。
 確かに元気で人生で最も活動的な年代は生殖年代であり、それが生き物・人間としては“盛りの時”であることには間違いありません。その成人期が終わり、体調が崩れる50代の更年期は、丁度冬に向かう秋の如き感のあるのも、またそれも否めないことともいえます。
 
 人生50年と昔から言われるのには、単に平均寿命のみのことではなく、生命の伝承の主役である“卵子”の寿命との関連という、かなりしっかりした生物学的意義があるのです。それを少し詳しく説明しますと、次の様になります。

 女性は生まれる時に卵巣に上図のように30~40万にも及ぶかなりな数の原始卵胞をもって呱々の聲をあげるのです。そして、思春期に入るまで少し数を減らします。その中から、毎月1つずつ成熟させて生殖の可能性を探りながら排卵し続け年を重ねるのが、生物学的観点から見た、女性の人生といえるのです。その間、多数の原始卵胞もどんどん消滅しゆき、30才を過ぎる頃になると残るのは数万台になるのです。そして残った卵胞も耐用年限があり、原始卵胞は除々に傷み始め、奇形発現の可能性が、少しづつ高くなって来るので、50才にもなると、もはや遺伝子的な障害度からして奇形発生との関連で使用すべきでないという、神(?)の采配により、50才をもって使用打ち切るべしということが決まっております。そこで卵巣萎縮・閉経と言う生物学的秩序が動いて、閉経になるのです。

 最近の栄養環境が良くなったことで、30才過ぎても卵の自然の傷み方もやや遅れているのではという推定もあり、晩婚時代の現在、30代初産の方も増えてはおりますが、やはり、その排卵を完全に中止する閉経年齢は50才という神の決定は、エジプト時代から今も変わりなく、生物学的にも妥当のようです。

 そしてそれに合わせて、人間の体力維持デザインも遺伝子的に設定されている訳です。そこに、命の伝承を最大の命題とする人間の、人生50年の原理があるといえると思っております。

 しかし、そこに、近代医学の大進歩により、21世紀は新しい問題を抱えるようになって来ているのです。

 20世紀の医学の進歩により、感染症や癌その他の諸々の疾患への医学的対応が急速に改善されたことで、この21世紀に入るや、平均寿命は11951年頃の50才から、今や80才にまで大きく延びてきており、度々述べているように、かなりな長寿化時代に突入して来ているのです。今年7月16日厚生労働省発表では、我が国の平均寿命が、男性79.29歳、女性86.05歳となっております。そして研究学者のコメントとして、実際はかなりの人に90歳以上までの長寿人生が与えられるようになってきているのです。
 そこで問題は、神の命題である生殖の任務を終え、更年期を過ぎた後の長寿人生を創生した医学が、如何にそれを高いQOLで支えるかが問題となってきているのです。
 それはまさに、余生という概念から離脱して、神ならぬ自らの手で創ったその長寿を、意義深いものにしなければなりません。そこでその人類の大きな命題の実現のために、新しい抗加齢医学が、今や大きく浮かび上がって来ているのです。Anti-agingと言うより、Well-agingの為の医学の手が必要になってきたといえます。
 信長が叫んだという“人生50年”時代は、もはや終わりを告げ、その50年にプラス30~40年もの新たな人生が、我々に与えられたとなると、それをつなぐ更年期の意義が大きく転換して来ているといえます。

 更年期までは、生殖の役割を支えている性ホルモンにより、生物学的活力が維持され、一応保証されているのですが、その後の余生という、所謂生き物としての基本的な支えを失った人間が、可能な限り活性を維持しながら生き続けた訳です。
 いうならば、更年期を何となく苦しまずに通過すれば事足りるという昔の発想から、人生折り返し点で上手に調整しつつも、さらにその後の熟年期へしっかりと健康をつないでいく連続した医学的プランを考えていかねばならないのです。長期的な発想に基づく医学へと転換することが求められつつあるのです。
たとえ、更年期を思秋期としても、来るべきものは、暖房も何もない厳冬生活とは異なり、スキーも楽しめるし、更には赤道をまたいでオーストラリアの夏を暮らせる文化的な冬にすべき医学になって来ているのです。

 今までは、男女も含めて更年期障害のみの治療に焦点を合わせて、辛い体調不全を治療で戻せばよく、その後は自然な成り行きに任せてしまうというのが一般的な医学の姿勢でした。しかし、更年期障害を経験するような体調を持つ症例は、更年期障害の症状もなく無事更年期を過ごした人々に比べれば、その後の長い年月を充分健康で過ごせる可能性はかなり低いといえます。また問題なく過ごした方達も、当然車のエンジンオイル的性ホルモン低下による影響を受ける訳です。
 しかも急激な性ホルモン低下以外にも、他のホルモン分泌低下や諸機能低下も加わる訳です。

 先日ある医学分野で権威ある医学者と議論した折、彼は人間は自然に老いるべきであり、弱そうだからと敢えて医学の手を差し出すのは、神の原理に反するのではないかという意見を強く主張していました。
 医学的に自然とは何かという医学哲学のような問題点ですが、眼鏡、補聴器、入れ歯そして外科手術を当然のごとく受け入れ、その意義を謳歌しながら、個人差の大きな加齢性全身的体調減退を自然に任せるとは何故か?、と矛盾を感ぜざるを得ないのが、私の医学哲学ですが、可笑しいでしょうか。
 かって、高名な財界の方が引退後、粗食の美を自然と信じて過ごされ、惜しまれつつ短命で世を去られたという話が残っておりますが、まさに個々人がそれぞれ1回の人生を現代的に生きる為の“人生哲学”と現代医学との係わりは宗教なのか科学なのかともいえる問題かもしれませんが、積極的な生き方こそが今様と感じております。

 私は、人間の命を可能な限り健全に保持し、それぞれの引き返せない、繰り返せない人生を過ごすべく努力するのが医学の努めであるべしと信じておりますし、それが幸せへの道と、思いつつ仕事を続けています。其の立場から、今、新しい更年期医療問題を論じている訳です。

 下図のように、更年期から熟年期まで通しての医学でなければなりません。

 

 そして我々は健康管理次第で、上図のように現在の歳である歴年齢と生理機能年齢とでは、その更年期から熟年期の年代ではほぼ上下それぞれ15年の差が出来て、合わせると同じ年齢でも30歳もの生き物としての年齢・元気さの違いが出るとされております。
 少なくとも、このロシアの大統領であったゴルバチョフさんのように、7掛け人生と自慢できるように健康管理し、生理学的若さを維持することこそ、Anti-aging&Well-agingの医学の目指すところと言えます

>>>『男をもっと知って欲しい』バックナンバーはこちら

 

筆者の紹介

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熊本 悦明(くまもと よしあき)

日本Men’s Health 医学会理事長
日本臨床男性医学研究所所長
NPO法人アンチエイジングネットワーク副理事長

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