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「アンチエイジングの専門家がナビゲート」(ガイド:熊本悦明

女性も男性ホルモンのシャワーを浴びる。男女・性ホルモンの創られ方を説明しよう

 

§何故女性で男性ホルモンなのか?
 前回女性も男性ホルモンのシャワーを浴びると説明しましたが、多くの方は恐らく、睾丸もない女児が何故男性ホルモンのシャワーを浴びれるのかと疑われたのでは無いでしょうか?
 そこで、回り道になりますが、男女・性ホルモンの創られ方を簡単に説明しておく必要があると思い、少し両性ホルモンの関連性を見て戴きます。

 図1に示す様に我々の身体にある副腎・精巣・卵巣は同じ様に先ず黄体ホルモンを創り、それから男性ホルモン三兄弟・女性ホルモン三姉妹の内のどれかを特に多量産生出来るように、それぞれがある程度特化した酵素を多く持ち、臓器特有の特徴を生かしながら活動しています。という事は、逆に観察してみれば、特色ある性ホルモン以外のホルモンもそれなりに分泌していることなのです。殊に副腎は男女ともに持ち、それから分泌される弱男性ホルモンであるデハイドロエピアンドロステロン(DHEA)は女性では男性ホルモンとしてかなりな役割を果たしているのです。

 前回述べた様に、胎生期2ヶ月頃までに行われる内外性器の男性化には、かなり大量の男性ホルモンが必要なのですが、その後の発生段階ではそれ程高い濃度の男性ホルモンのシャワーでなくても、弱い男性ホルモンでもある程度の男性化作用が出てくるのです。
 その為、女児でも、男性ホルモンが微量ながら母親の副腎や卵巣から一応分泌されているので、その影響を受けているのです。個々の母親により、そこからの分泌される男性ホルモンの量にかなりなバラつきがあり、それが体内の女児に微妙な男性化のバラツキを創り出すことになるのです。

 また双子で相手が男児であれば、その児からの男性ホルモンの作用で女児が或る程度ながらはっきりハッキリ脳の男性化が起きるのが証明されております。また、女児自身が副腎皮質症候群といって副腎から多量に男性ホルモンが分泌されている症例や母親が流産防止の為に男性ホルモン作用も強い合成黄体ホルモン飲用したを服用した症例では、かなり顕著に男性化現象が出ております。要するに、女性といえども、皆、色々な程度の男性化のシャワーを浴びて生まれて来るのです。そこに女性でも2D/4D比分布にかなりな広がりが出来、又それで前回も示した下記の図の様な性格上の差も出てくる訳です。

 なお、男性でも、外性器はしっかり男性化した後でも、その後の男性化機序に、図にある様にやはりかなりな程度の差が、性格形成の段階で出ていることも注目される所です。胎生初期の性器の性分化時と、その後の骨格・脳の性分化段階のときでは、男性ホルモンの作用の仕方が少し違うようにも見えます。しかしそのあたりの疑問には、未だ答えがでるほど研究は進んでおりません。

 事実として、男は男なりに、女は女なりに、身体や脳は、かなりの幅を持ちながら、その男性ホルモン・シャワーによる男性化の影響を受けて、生まれ出ていることを理解する必要があると思います。
 ことに女性側で、その様な事実があることは、女性の多くの方が驚く事かもしれませんが、生物学的に面白い所でしょう。男と女の間に形態上の差は大きくあっても、性格的・気質的な面での脳の性分化では、このように面白いように連続性があり、男と女は“裾のつながる双子山”という様なつながりを持つ生物学的現象といえます。

 胎生期の性器分化の終わる3ヶ月頃から、第二の段階の男性ホルモン・シャワーの影響が出て来始めるとされていますが、前述した様に手の指ばかりでなく顔の形、骨盤や肩幅形成にもかなりの影響があるとされています。
 2歳児の人差し指(2D)/薬指(4D)の比、(主に右手)を出生時に保存しておいた羊水の中の男性ホルモン値とが、かなり高い相関性があることを実証したという研究論文もあり、単なる行動心理学的な事実だけの話ではないことが注目されているのです。
 少し話が専門的になって、判りにくい所もあったと思いますので.2D/4D比と色々な問題点の具体的な関連性を理解を深める為にもう少し詳しく説明してみましょう。未生以前、生まれる前の胎内にいる間の男性ホルモンシャワーが強い程、身体の色々な部分がより男性化するということはどんな事か、今まで明らかになりつつありことを、もう少し細かく下記の点については、さらに解説・検討して見ることにします。

【1】顔や骨盤・骨格の形成
【2】性器の陰茎や睾丸などの発達
【3】脳の性分化における男女の性の生理の創生
【4】性格的な積極性、Aggressiveness(攻撃性)、Domianance(優越性)の形成
【5】視覚・空間知覚能力や読み書き能力だ度の知的能力の発達

 ただ、これらの細かいことは追々説明していくとして、全体として、性分化・男性的特徴形成という生物の秘密とされるものが、極めて大雑把にしても、手の2D/4D比の中に表示されていることが明らかになってきていることは、目が覚める思いがします。
 そこに、人間・生き物としての男女の特徴を持つ荒削りの塑像の、母体の中で創生されている事情の影が、面白いように浮かび上がって来ているという訳です。我々の生き物としての“生物たる因縁”があることを自認し、それなりに生きるべき覚悟と自覚を深めるべき命題があるといえましょう。これこそが、あるいは禅宗の高僧が求めていた、あの公案への真の解答なのかもしれません。
 だだ、この生物学的知見を面白がるだけでは、あまり進歩もなく、意味も無い訳で、これだけで終わらせるべきでなく、生き物であると同時に文化教育生活環境と言う生きる条件を持つ人間を、両者の絡みをどう解明し、どう指導していくべきか、教育的立場からの次の大きな命題となるといえましょう。
 今までは“女は女に生まれるのではなく女に育てられるのだ”という警句だけが先行していて、生物学的な制約無視否定の様な思想の流れが、最近まで社会的な支持を得ていたといえます。それを今後どのように修正し、どのように教育的に人を育てるかを、改めて考え直すべき時が来ている訳で、生物学的文化教育学というようなものが必ず生まれてくる筈ですし、それが楽しみでなりません。

 

>>>『男をもっと知って欲しい』バックナンバーはこちら

 

筆者の紹介

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熊本 悦明(くまもと よしあき)

日本Men’s Health 医学会理事長
日本臨床男性医学研究所所長
NPO法人アンチエイジングネットワーク副理事長

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