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「アンチエイジングの専門家がナビゲート」(ガイド:熊本悦明

手相師でもないのに何故かと思われるかもしれないが、この“お手”が色々なことを物語っている

 

§お嬢様、お手を拝見!
 手相師でもないのに、医師たるもの、女性のお手を拝見などというのは、何故かと思われるかもしれませんが、この“お手”が色々なことを物語っているのです。
 
 前回、人差し指が薬指より短いロンドンの証券所の証券マンの成績が良いという話を紹介しましたが、この人差し指/薬指比《2D/4D比》の話は、もっと広い視野での色々な面白い分析が進んでいるのです。最近非常に興味深い成績が次々と報告されて。話題を振りまいています。
 
 我々人間は、前にも説明しました様にそもそも女性型イブが原型で、それにどの程度男性化の機序が働いてか、アダム化したかにより、個々人の全人的な広義の“性”のあり方が決まってくるのです。社会的に単純に男・女とはっきり別れて暮らしてはいるものの、医学的な見方すれば、少し極端な表現になりますが、現在生きている我々男・女の身体の中で、その男性化の程度がどの程度進んでいるかということで、色々な形の生き物として性差が出てくる訳です。
 我々個々人は図1に示すように女性の赤い色紙に男性化の鉛筆で青の領域がどの様に色付けされて、生まれて来ているかということです。それぞれの個人は図中の上下に引いた線にあたり、その線がどの程度青色に染まっているかということがその人の生物学的性差の原点といえるのです。

 その生物学的な性度(男らしさ)の上に、生後の文化的性が重なって“あなたの現在の性がある”のです。そして今や医学的に非常に関心がよせられているのは、我々がこの世に呱々の声を上げる前に創られる“生物学的性”の原点を、生後の今、大雑把ながら垣間見ることが出来ないだろうかということなのです。
 
 そもそも、我々が、人間としての各種の器官を持った身体に創られて生まれてくる作業は、染色体上の遺伝子の指揮の下で行なわれるのです。その器官を形成する遺伝子群は、4つのセットからなっております。そしてそれぞれがグループとして固まっているため、図2に示すように、ホメオボックス遺伝子(Homeobox gene)と呼ばれ,4つの群は別々の染色体上にあってHox A、 Hox B, HoxC, Hox Dと名付けられております。

 大分ややこしい話になって恐縮ですが、これを理解して頂かないと話が進まないので、もう少しお付き合いください。
 この遺伝子群のうちHox AとHox Dの中に並んでいる遺伝子の中で図2に示す番号の多い11~13の遺伝子が、手足や性器の形成に関与することが知られております。その遺伝子の創作作業に男性ホルモンが影響を与えるので、それが手の人差し指や薬指の長さに色々な個人差が出て来て居るのです。この点に関して、ここ20年位の医学の進歩で、大分解明が進んでいます。
 
 その遺伝子群は身体の四肢手足のみでなく、さらに性器の形成にも関与しているので、この遺伝子群の異常は所謂手・足・性器症候群と言われる奇形を作るとされております。要するに細かいことは略しますが、性器性分化にも関与する遺伝子の支配下にある手指が、性器の男性化と同様に男性ホルモンの影響を受けているのです。かなり昔から手相で性格判断をしたり、また手指の長さのバランスが男女で差があることが論ぜられたりはしておりました。洋の東西を問わず人間の知恵として、手に何らかの人間形成の秘密が隠されているのではという事を、うすうす感じられていたといえますが、近年の生物学の進歩がその“バンドラの秘密の箱”を少しづつ科学的に開き始めている訳です。
 
 しかもその男性ホルモンの作用は、さらに骨盤その他の骨格形成や顔の形、そしてもっと重要な脳の性分化や性格形成にも及よんでおり、かなり広範な人間形成の基礎作業に関与していることが明らかにされてきたおります。
 要するに、人差し指の長さの変動の中に、男女の性差の秘密である胎生期の男性ホルモン作用の残像があることが、漠然ながら、科学的に分析されるようになったのです。

 そして、その結論からまず紹介しますと、人差し指(2番目の指という意味で2D)と薬指(4番目の指4D)との長さの比:2D/4Dが、胎生期の男性ホルモン作用が大きい程、その比が小さく2Dが短くなっているのです。しかもそれは男性のみでなく、女性も含めて、その人が生まれる前の母親の胎内で、どの程度男性ホルモン・シャワーを浴びていて、脳が男性化を受けているかを、一概には言えないにしても、かなり大雑把ながら推定できるということになってきえているのです。これには、多少の民族的な差異はあるものの、大筋は変わらず、生き物人間の性分化が行われている胎生期の秘密が少しづつ明らかにされ初めて来ているです。
 文化教育こそ人間形成の基本であると信じている方々や、自分達が生き物としてのかなりな規制を負っていることを忘れ勝ちな現代人達にとっては、このような科学的生物学的知見には、非常にショッキングな事実が明らかになって来ているのではないでしょうか?

 その影響の中で、臨床上、また日常生活の上で、非常に興味を持たれているのが、良い意味でのaggressiveness(攻撃性)、いわば気の強さを持っているかという性格形成の背景説明に、一応の指標となるサインが手にあるのではないかということになりつつあるのです。先に説明した証券マンの知見が、それを実証しているのです。さらに、もう一つ興味ある資料を紹介しましょう。

 図3は、イギリス・リバプールのフットボール選手での調査です。

A :一般市民男性群
B:町のフットボールチームの選手群
C:その中から選ばれたナショナルチーム選手達とそのコーチ群

 この3群間での2D/4D比を比較したものですが、興味あることには、明らかにA,B,C,の運動能の優れている順にその比が小さくなっているのです。つまり、運動能力の優れている群ほど胎生期に強い男性ホルモンシャワーを浴びていることを示していて、男性ホルモンが高いといえます。また他のデータですが(図α)、各種運動の選手群において、その運動成績と2D/4D比の関係をみても、運動能の高いもの程その比が小さく、やはりフットボールチーム選手群と同じような成績になっております。運動能の素質にかなり先天的な因子があることを示めしている、非常に興味深い知見といえます。激しいトレイニングだけでは、何か超えられない生物学的な条件があるのではないかと思います。それをこの2D/4D比が、ある程度教えていると言う事は生き物人間の秘密を物語る意義あるデータといえませんか。

 しかも興味深いことに、図βに示す様に、一般的な疫学的能力調査で男性は、男らしさの象徴である視覚・空間知覚脳が優れているとされています。それが、2D/4D比が小さい、人差し指が短い人ほど、それが優れているというデータが出ているのです。

 さらに興味あることに、このような事が、図4の様に、積極的性格・力強さ(Dominance)の感覚と2D/4D比の小ささとの相関関係が、男性ばかりでなく、また女性側でも見られる所見があることです。例えば、一見優しそうな美しい女性でも、人差し指が薬指よりかなり短い人は、実は気の強い手強い型が多いということも知られ始めてきております。  

 何となくお手を拝見し、“お綺麗な手ですね”などと褒めながら、指の長さをチェックしてみると、お付き合いの心構えも違ってくるかも知れません。その所見が全てとはいえなくても、“お嬢様、お手を拝見”というのも、かなり人生を歩む上での知恵ともなりかねない、面白い示唆に富んだ、有用な(?)チェックとなってきているといえませんか? 女友達としては元気の良い人差し指が少し短めの人、一緒に暮らすには、それが長めの人が良いのではないかという外国の真面目な論文さえ出ております。これは男性側にもいえる訳で、カップル相性判断になるという論文も出ております。
 学問とは、まことに面白いものであると、近頃思うようになってて来ております。

 

>>>『男をもっと知って欲しい』バックナンバーはこちら

 

筆者の紹介

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熊本 悦明(くまもと よしあき)

日本Men’s Health 医学会理事長
日本臨床男性医学研究所所長
NPO法人アンチエイジングネットワーク副理事長

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