アンチエイジングニュース

「アンチエイジングの専門家がナビゲート」(ガイド:塩谷信幸)

 

ガリバーというと、小人の国とか大男の国とか、子供のおとぎ話のように取られていますが、実は、ガリバーの著者のスイフトは稀代の人間嫌いで、あの旅行記も実は痛烈な社会風刺の物語なのです。中でも極めつけは馬の国の物語ですが、実は、今ひとつの飛ぶ島の中に、不老不死の話がでてくるのです。

その国、ラグラダには時折、不死人間が生まれます。額に赤い斑点をつけて生まれるのですぐわかります。するとその家族はその子の不幸な将来を思い、悲嘆にくれるというのです。

不死身であるのは素晴らしいはずなのになぜでしょう?それは不老でないからです。

ガリバーはラグラダ人に不死人間のコロニーに案内されます。そこで見たものは、“永遠の若さ、永遠の健康、永遠の元気と言うものが前提”に出来ないまま、永遠の寿命だけをを与えられれば、“老齢ともなれば必ずつきまとう様々な不幸のさなかにあって、長寿をどう生き抜いてゆくかである”。と述べて、八十歳を過ぎたボケ老人の悲惨な生態を、延々と書きつづっています。

ま、詳細は岩波文庫の平井正穂氏の名訳をお読みいただくこととして、その章の結語の部分をガリバーの言葉から引用します。

“こうして“不死人間に関するこの国の各種の法律が、全く当然と認めないわけには行かなかった。(ラグラダでは八十歳を過ぎるや否や、彼らは法的には死んだものと見なされ、かろうじて生きていることだけが許されるのです。)何しろどん欲は老人の免れ得ない性癖である以上、この種の法律がなければ、この不死人間たちがやがては全国民の経済力を支配し、政治権力を掌握することになろう。そうなった場合、彼らが経済維持の能力を欠いた人間であることを考えれば、結局は国家の破滅につながらざるをえなくなるであろう。”

これを読んだとき、某国の某政党の有り様にあまりぴったりなので、僕は慄然としました。ここで:小泉がんばれっ!齢70を目前にした僕としても、不死の恐ろしさのスイフトの鋭い洞察、いや全く同感です。余命幾ばくかが問題ではなく、その質、今はやりの言葉では、クォリティ オブ ライフが重要なのです。つまりこれこそがアンティエイジングの唯一の命題と言えるでしょう。

いたずらに延命を計るのでなくその質を、つまり患者の生き甲斐を考えるべき、と言うことは医療の世界でも、つとにいわれています。そうはいっても平均寿命ぐらいは生きたいと、未だ僕も娑婆気というか未練はありますがね。

ま、お互い、このホームページをネットにして、アンティエイジングに励み、これから充実した人生を送りましょう。

筆者の紹介

塩谷先生

塩谷 信幸(しおや のぶゆき)

NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長、北里大学名誉教授
東京大学医学部卒業。フルブライト留学生として渡米し、オルバニー大学で外科および形成外科の専門医資格を取得。帰国後、東京大学形成外科、横浜市立大学形成外科講師を経て、北里大学形成外科教授、同大学名誉教授。 現在、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療と研究に従事。日本形成外科学会名誉会員、日本美容外科学会名誉会員として形成外科、美容外科の発展の尽力するかたわら、NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長、日本抗加齢医学会顧問としてアンチエイジングの啓蒙活動を行なっている。

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