アンチエイジングニュース

2006年6月12日に、東京・新宿の新宿区医師会館で開催された『新宿区医師会統合医療検討委員会・第二回講演会』で、NPO法人アンチエイジングネットワークの塩谷信幸理事長が行なった講演『アンチエイジング医学の現況 ―老いを遅らせるための美容医学―』の内容が、社団法人新宿区医師会会誌の平成18年(2006年)8月号に掲載された。その概要を抜粋して紹介しよう。

アンチエイジングの現状

 塩谷理事長は、アンチエイジング(抗加齢)はこの5年、10年でできた分野なのでまだまだ混乱がある。例えば企業の利益追求のための手段に使われたりしてうさんくさい目で見られがちの部分ある。さらに、歴史が浅いためまだエビデンス(科学的根拠)に乏しい実情もある。コマーシャリズムと闘いながらエビデンスを築き上げていかなければならない。皮膚科医、形成外科医は皮膚の若さを、内科医はホルモン療法や抗酸化療法を、化粧品業界はクリームレベルの問題としてアンチエイジングが使われ、処方を受ける人も処方する人もばらばらの状態にあった。しかし、6年前に日本抗加齢医学会が設立され、各科の医師がエビデンスをつくっていこう、統合していこうという機運が高まってきたと説明している。

 そもそもアンチエイジングが目指しているのはどういうものなのか。塩谷理事長はつぎのように語っている。

 一番の問題は、われわれが目指すものは何かということです。結論から言うと、時計の針をできれば少し戻したい、歩みを遅らせたい、ただし止めることではないということなのです。

 アンチエイジングが目指すものは不老不死ではない。平均寿命は80歳くらいだが、最後の5年間は要介護状態になることも多い。寿命が尽きるまでの間は健康で、要介護の期間を短くしたいというのがアンチエイジングの目指すものなのだと説明するとともに、抗加齢医学によって寿命の間は、なるべく健康を保つことが医学的にだんだんできるようになってきたと理想に医学の力が追いついてきたことを示した。

 要介護状態にならない健康な体の維持だけで、高齢者の心が充足するほど単純なものではない。塩谷理事長は、「疾病予防」「判断力と体力」「普通の社会生活」この3つの輪が絡んだところに高齢者のQOLがあると考えている。社会生活を営もうと思うと、疾病を予防するし、判断力を保ちたいと願うと。

 特に高齢者にとって「人に必要とされている」ことを実感しながら社会生活を生きていくのが一番大事であると塩谷理事長は語る。そのために、疾病予防をし、判断力や体力を保ち、人との交わりを保つという精神状態になってくれればよい。老人も社会の支えである、社会に貢献していける。そのためにはいまの企業の勤務体制に高齢者もはめ込むことが必要だが、もっと高齢者の方から社会に対してアピールして正していかなければならないと思うと続けた。

アンチエイジングの治療法

 では、実際にどのようなことをすればアンチエイジングになるのだろうか。

 塩谷理事長は「サプリメント」「抗酸化療法」「ホルモン補充療法」の3つが必要と語っている。

 まず、サプリメントについては、今の食生活だとどうしても足りないものがでてくる。

 私も元来余り薬は好きではないんですが、やはりサプリメントというのは、少なくてもマルチビタミンと多少のミネラルは摂った方がよいとされています。

 とくに高齢者はマルチビタミンを摂ったほうがよいとのことだ。

 抗酸化療法をいま一番注目を浴びているアンチエイジングとして取り上げ、活性酸素についてつぎのように説明している。

 われわれが生きていために酸素が糖分を燃やしてくれます。それはミトコンドリアで行なわれており、それは必要なのですが、その過程で活性酸素というものができてしまう。これが例えば鉄とか脂肪に付着すると、悪循環で全部錆びさせてしまうという考えてです。

 さらに、酸化原因のワースト3は、ストレス、紫外線、たばこと挙げた。その活性酸素の働きを抑えるのに、ビタミンC、ビタミンE、αリポ酸、コエンザイムQ10、赤ワインに含まれているポリフェノール、カテキン、イソフラボンが有効と紹介している。

 ホルモン補充療法については、1992年にボストンでラドマン医師が成長ホルモンを高齢者に与えたら、非常にいろいろな点で元気がよくなり、心血管、メンタル、骨粗しょう症、すべてにおいて若返ったという報告を出したことから始まったと歴史を語り、見直しもありが、性ホルモンの前躯体であるDHEAを与えると、性ホルモン自体もバランスがとれて補充したことになっていると説明している。

 女性の場合は閉経時期に性ホルモン量が急激に減少するいわゆる更年期がある。実は男性にも更年期があることが知られてきている。

 札幌医大の熊本先生(アンチエイジングネットワーク副理事長)によると、男性の更年期障害の場合、女性のようにホルモン量がストンと落ちないのでわかりにくいが、実際に確かにテストステロンが落ちていく。それも症状として半分以上がうつ症状になるという。なので患者によってはうつ状態はむしろ更年期障害で、うつ病ではないと医師が伝えると、症状が軽減する患者もいるそうと塩谷理事長が男性の更年期についても説明を加えた。

 肌が老化する原因として、紫外線による光老化、活性酸素による細胞の酸化、皮膚の乾燥と、乾燥により皮膚が薄くなることを挙げた。耳の周りに切開を入れて顔の皮膚を全部剥がすしわ取りの手術、フルーツ酸でしわやしみを取るケミカルピール、レーザー、ヒアルロン酸やコラーゲンの注入、ボトックスで筋肉を弱めて筋肉によってできるしわを取るなどの皮膚のアンチエイジングについて説明を行なった。

 最近老人ホームにメイクアップアーティスト、エステが出張サービスする時代です。それで実際にお化粧なんかすると老人たちがまた生き生きして、外にも出るようになる。寝たきりでなくなるわけですね。

 皮膚のアンチエイジングは見た目をカモフラージュするだけではなく、特に女性にとっては、生きる活力をも与えうるものなのだろう。

 アンチエイジングはこの5年、10年でできた分野なのでまだまだエビデンスが少なく混乱がある。アメリカでは社会全体の問題と捉え「ジェロントロジー(老年学)」として研究が進んでいる。日本でも東京大学に講座ができた。老年学のひとつとしてアンチエイジングがあり、アンチエイジングを活かしていくには、老人学的なすそのの広がりが必要であると塩谷理事長は最後をまとめた。

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