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教育レベルとアルツハイマー病の進行スピード――ハセ博士のヘルシー情報最前線(102)

 超高齢化社会の訪れとともに、認知障害(痴呆)の人が本当に多くなってきました。痴呆症状は出たものの、ある程度で収まる人がいる半面、頭脳明晰な人が突然発症し、見る見るうちに痴呆症状が悪化してしまう人もいます。

 不思議に思っていたところ、教育水準の高い人はアルツハイマー病の発症そのものは遅いけれど、いったん症状が現れると認知能の低下速度が速まることが報告されましたので、お知らせします。

 これはコロンビア大医療センターのNikolaos Scarmeas博士らが医学誌Journal of Neurology, Neurosurgery and Psychiatry(2006,March)に報告したものです。

 調査では、65歳以上ですでにアルツハイマー病と診断されているニューヨーク在住の312例を対象に、5年以上にわたって追跡調査したもので、その間に脳の諸機能を調べました。

 その結果、全体では認知能は1年あたり9パーセント低下することが分かりました。次に教育歴との関係を調べたところ、教育を受けた期間が1年長くなるごとに、1年あたりの認知能低下スピードが0.3パーセントずつ速くなっていました。特に思考過程の速度(1年あたり0.6パーセント)および記憶(同0.5パーセント)に最も強い影響があったということです。

 この結果から、教育水準の高い人は脳細胞の数が多いか脳のシステムやネットワークが効率的になっていると考えられます。このため脳の一部が破壊されてもそれに対処する余裕があるのですが、このような人はそれまでに脳の変化が蓄積しており、臨界点に達した段階で一度に崩壊が起こり、急速に悪化すると考えられるそうです。

 ではどうしたらそれを防げるかが重要となりますが、教育歴に限らず、いつまでも頭を使い続けるのが有効のように思えます。

ハセ博士=薬学博士。国立大薬学部や米国の州立大医学部などで研究や教官歴がある。現在は製薬企業で研究に従事している

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