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長生きの簡単な方法――ハセ博士のヘルシー情報最前線(59)

 古今東西、長寿の方法が探し求められてきました。しかし、最も確実で科学的に証明されているのは「食べ物に注意し、特に摂取カロリーを制限すること」とされています。

 これは1930年代以来さまざまな研究から分かってきたもので、犬から粘菌まで幅広い生物の寿命を調べた研究では、カロリー摂取を通常の半分に減らすと、30~70パーセントも寿命が延びることが知られています。

 人の場合にはそのような科学的な証明は難しいのですが、古来からカロリー制限や粗食が寿命を延ばすと言われています。

 しかし、そのためには食べ物を我慢したり苦しい絶食をしたりしなければなりませんから、それまでして寿命を延ばすことは嫌だという方も多いでしょう。

 ところが今回、通常よりカロリー摂取をわずか5パーセント下げるだけで寿命が明らかに延びるというニュースです。

 これは、カルフォルニア大学バークレイ校のMarc Hellerstein博士らが、米国生理・内分泌・代謝誌(the American Journal of Physiology-Endocrinology and Metabolism)に報告したものです。

 研究では、水分子のうちの水素原子を重い同位体で置換された「重水素」をマーカーとして用いました。

 この重水をマウスの食事に混ぜ、それぞれの組織のDNAにどのくらい取り込まれるか調べたそうです。

 最初に、マウスがいくら食事をしてもいいようにしておき、次にその食事のカロリーを95パーセントになるように調整して、DNAへの重水素の取り込み速度を調べました。

 その結果、カロリー制限をした場合には、細胞分裂のスピードが37パーセントも低下しており、がんなどを起こす遺伝子の変異率が明らかに低下することが分かりました。

 遺伝子の変異率が上昇すると、細胞にはさまざまな悪影響が出てきます。例えば、がん細胞は遺伝子変異が多く起こった結果生じるものです。通常の正常細胞は、DNAが変異してもそれをもとの正しいDNAに戻す修復系と言われるシステムがあり、なかなかがんにならないような安全弁となっています。

 ところが、あまり細胞分裂のスピードが速いと遺伝子修復系が働けなくなってしまいます。そのため、遺伝子異常が生じて、がんや老化が起こりやすくなると考えられています。

 従って、カロリー制限をすると細胞分裂の速度が低下し、遺伝子修復が効率よく起こるために、老化が抑えられえることが期待できるわけです。

 今回の研究はマウスを用いたものですが、今までのカロリー制限に関する実験結果は単にその動物だけでなくさまざまな生物にも当てはまることが知られています。従って、今回の結果も、人に適応できるのではないかと期待されます。

 皆様、ほんのチョツピリでいいですから、カロリーを減らすよう心がけてはいかがでしょうか。

ハセ博士=薬学博士。国立大学薬学部や米国の州立大学医学部などで研究・教官歴がある。現在、製薬企業で研究に従事している

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