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リノール酸の痩身作用は本当?――ハセ博士のヘルシー情報最前線(55)

 共役リノール酸(conjugated linoleic acid, CLA)は魚や乳製品に含まれている天然の脂肪酸の一種で、体内脂肪を低下させて体重を減らし、その一方で筋肉質にさせる作用があるとして、人気のサプリメントになっています。

 特に昨年5月に報告された、CLAを取った180人の肥満者について調べた研究結果では、ライフスタイルや食習慣を変えなくても体の7~9パーセントの脂肪が減少することが報告され、反響を呼んでいました。

 しかし、その結果は1年間CLAを取った場合のもので、もっと長期間取り続けた時にも効果が続いているのか、またその場合の副作用の有無についてはよく分かっていませんでした。

 そこでノルウエー・スカンジナビア医学研究所のMichael W. Pariza博士らは、CLAを毎日3.4グラム、1年以上摂り続けていた134名の肥満者について、さらに1年間の追跡研究を行ない、その効果と影響を調べました。

 この結果は、栄養学誌(The Journal of Nutrition, 2005, Aprl, 1)に報告されているものです。

 その結果、すでに1年間CLAを取っていた人は、最初の年に平均3.5ポンド(約1.8キログラム)の体重減少が見られましたが、それ以後に取り続けてもこれ以上は体重や体脂肪が減っておらず、前年と同じ状態を維持していただけでした。

 その一方で、LDL(悪玉コレステロール)が増加しており、逆にHDL(善玉コレステロール)が減少していました。また、白血球数及び血小板数も増えており、動脈硬化などの血管にダメージを引き起こすリスクが高まっていたそうです。

 以上の結果から、CLAは短期間では確かに体脂肪などの低下には役立ちますが、長期間摂取し続けても効果がなく、むしろ副作用の心配が高まることを示しています。

 今回の調査対象の人は、本来心がけるべき食事制限や運動などの生活習慣の改善を積極的に行なわなかった人たちのようで、そのような人が単に痩身目的だけのためにCLAに頼るのはあまり意味がなく、むしろ危険であると述べられています。

 やはり、生活の見直しを中心に肥満対策を取るべきであると思われますので、ご注意を。

ハセ博士=薬学博士。国立大学薬学部や米国の州立大学医学部などで研究・教官歴がある。現在、製薬企業で研究に従事している

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