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健康に効く話(8):腸内細菌を増やすのはヨーグルトだけではない

 近年、「腸内細菌」という言葉がよく聞かれます。私たちの腸の粘膜には100兆個ともいわれる腸内細菌が住みついており、便通をコントロールしたり、有害物質を外に出したり、体のさまざまな病気を予防したりといった強力な免疫力を発揮しています。

 この腸内細菌には、体にプラスに働く「善玉菌」と悪い方向に働く「悪玉菌」があり、善玉菌を有意に保ち、腸内環境を整えることが免疫力をきちんと働かせるために重要であることが分かってきました。

 善玉菌の代表であるビフィズス菌を摂取した群で膀胱がんの再発が減ったという研究や、妊娠中の女性がビフィズス菌製剤を摂取した結果、生まれてきた子どものアトピー性皮膚炎の発症が低く抑えられた、など、実際の効果についてもさまざまな報告が出てきています。

 それだけに、ヨーグルトをはじめとする乳酸菌入りの食品が人気というわけです。ヨーグルトを摂ることを習慣にしている人もいるのではないでしょうか。しかし、だからといって、これだけにこだわるのは少々考えものかもしれません。

 この分野の専門家として知られる東大名誉教授の光岡知足氏の著書『腸内細菌学の重大発見 老化は腸で止められた』(青春出版社)の中には次のような文章があります。

「ヨーグルトを食べると確かに腸内にはビフィズス菌をはじめとした善玉菌が増殖し、腸内フローラ(腸内細菌叢)は美しくなる。しかし、これはその日限りの現象であり、持続効果を期待するなら1日500ミリリットルくらいを毎日食べなければならない。また、ヨーグルトを食べたからといって、他の食生活はおざなりにすませても大丈夫と言えるほど絶対的な存在でもない」

 ヨーグルトはカロリーも高めなので、摂りすぎるとコレステロールが高くなるなど、別の問題も出てきます。何ごともバランスが大切なのですね。

 専門家たちの話をまとめると――。

 善玉菌を増やす食べ物にはヨーグルトなどの乳製品のほか、オリゴ糖や食物繊維などがあります。オリゴ糖はごぼうや玉ねぎなどに含まれる糖質で、ビフィズス菌のエサになります。最近ではオリゴ糖でできたシュガーや甘味料があり、手軽に料理に利用できます。

 食物繊維は生野菜などに多く含まれる不溶性食物繊維だけでなく、昆布や海藻などの水溶性食物繊維も必要で、2対1の割合で摂るのが理想です。1日に必要な食物繊維の量は25~30グラム。現代人の摂取量は14~15グラムと極端に不足しがちなので、積極的に摂るべきです。

 また、効率的にビフィズス菌を腸内に送り込む方法としては、「生きたビフィズス菌製剤」があります。ビフィズス菌を食べ物から取り入れても、多くは消化液で死んでしまいますが、この製剤は特殊な製法で腸内に届くように作られているので、忙しくて食生活が乱れがちな人はこれを利用するのも一考です。

参考文献:『腸内細菌学の重大発見 老化は腸で止められた』(光岡知足、青春出版社刊)、『よくわかる最新医学 痔は可能な限り切らずに治す』(平田雅彦、主婦の友社刊)


狩生聖子=医療ジャーナリスト。著書に『ぐっすり眠る! 37の方法』(宝島社新書)などがある

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