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ポルノとアート

このタブーを破ったのが、クールベの「世界の起源」である。オルセーに飾られている作品だが、発表当時はものすごく問題になり、一世紀ぐらい無視された。
それには理由があった。アラブの富豪がクールベに描かせて、密かに自分で楽しんでいたのである。目的からいえば、完全にポルノだ。クールベだから芸術として通ったけれども、普通の人が描いたら猥褻画にすぎない。そもそもアートとポルノとの線引きは可能だろうか。
そのように思い、改めて恥毛の扱いにこだわって見てみると、モジリアニの場合は気にならない。純粋に絵として楽しめる。やはりアートとポルノを線引きすると、色々な要素の中にまず目的が挙げられる。さらにその中に描かれているモデルの視線やポーズで目的がはっきりする。線引きが可能かどうかは別として、やはりアートとポルノは違うのではないかということが、モジリアニとクールベのこの二つの作品を比べ、改めて感じられる。
またアートとポルノの間に「危な絵」というジャンルがある。
たとえばルーブルにあるフラゴナールのブランコの絵。フレアスカートでブランコを楽しむ女性の先に男性がいて、スカートの中を覗いている。これは、テーマは危ないけれども、作品自体は芸術作品として扱われる。
日本の春画にもこのようなテーマは散見する。
ま、そもそもこういう見方自体、あくまで男の視点の分析であって、けしからんと僕の年間セミナー「塩谷塾」の女性にはたしなめられてしまったが。
それで最近は、ミニスカートのおかげで苦労しなくても少し風が吹けば楽しませてくれる時代という訳で、「秘すれば花」漫画にすればこうなっても良いのではなかろうか。全てを見せるわけではなくチョッピリ象徴的に見せて観客の想像をかき立てる。

「秘すれば花」とはそういうことではなかろうか。

 

性器はアートの対象になるか

ニューメキシコにジョージア・オキーフという女流画家がいた。彼女の作品は、砂漠に晒された野獣の顔面骨など、特異なテーマで知られていたが、菖蒲の花がデフォルメされて、行き着くところは女性の性器という絵も描いている。しかもそれはそれなりに絵になっている。これは性器自体が美の対称になるのかという議論の答えとも言える。
男性性器の芸術といえばもちろん春画に描かれているもの。極端に誇張されているため、英語圏では「歌麿」は男性性器の代名詞になっているとか。
僕の長男は芸大の彫刻科の出だが、サーフィンに凝って自分でサーフボードも作るほどで、卒業作品もFRPを素材にした。その後ニューヨークに住み着き、FRPで真っ赤な男性性器そのものを作成。日本で買い手がついて送ったら税関で猥褻物だと没収されたのを思い出す。

最後に「秘すれば花」に戻ると、ギリシャのレリーフで、裸体そのものだけでなく、かえって透けて見える方が魅力的である、ということを意識して作ったのではないかとも言われる作品もある。これこそ「秘すれば花」であろう。


性行為が「秘め事」とされるのは故なきことではない。創生期に人間がリンゴを食べて判断力を持った時、途端に裸を恥ずかしく感じ、イチジクの葉っぱで局所を隠したとされている。
また美容外科の患者はみんな隠そうとする。それは当然なのだろうけれど、なぜ隠すのかということについては、“お化粧は誰でもしているけれど、その現場は見られたくない”。そんな心理的な要素があるのだと患者に教えられたことがある。

 

>>>『WHY?Anti-Ageing』バックナンバーはこちら

Dr.SHIOYA2 塩谷 信幸(しおや・のぶゆき)
アンチエイジングネットワーク理事長、北里大学名誉教授、
ウィメンズヘルスクリニック東京名誉院長、創傷治癒センター理事長

現在、北里研究所病院美容医学センター、医療法人社団ウェルエイジングAACクリニック銀座において診療・研究に従事しているほか、日本形成外科学会名誉会員、日本美容外科学会名誉会員として形成外科、美容外科の発展に尽力するかたわら特定非営利活動法人 アンチエイジングネットワーク理事長、日本抗加齢医学会顧問としてアンチエイジングの啓蒙活動を行っている。

【著書】
一年で一歳若返る/アンチエイジングのすすめ(幻冬舎)
美容外科の真実/メスで心は癒せるか?(講談社)
40代からの/頭と体を若返らせる/33の知恵(三笠書房)
「お若いですね」と言わせよう。(ゴルフダイジェスト)
など
ブログ『アンチエイジングブログ!』更新中

 

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