アンチエイジングニュース

「低脂肪・野菜を多く摂っても、心疾患やがんのリスクは下がらない!」
――ハセ博士のヘルシー情報最前線(388)

健康な食事といえば、低脂肪で、緑野菜の多い食事を連想します。
このような食事では、コレステロールが低いために心臓や血管の疾患が減り、また野菜が多いと大腸癌や乳癌の予防にも効果があると信じられています。

ところが、米国の5万人の閉経女性を対象にした大規模調査で、いずれの疾患についてもあまり効果がないことが明らかになりました。

これは、Journal of American Medical Association(JAMA)誌に掲載されたものです。

研究では、総摂取カロリーに占める脂肪の割合を20%にし、また野菜や果物、穀類を豊富に摂取するよう指導された群(介入群)と、食事指導を行わない対照群とを平均8.1年追跡しました。
ちなみに、対象となった被験者は50~79歳の閉経女性48,835人(平均年齢62.3歳)で、生活背景や人種には様々で、そのうちの40%の19,541人を介入群、60%にあたる29,294人を対照群としました。

1)米国MedStar研究所のBarbara V. Howard氏らは、致死的、非致死的冠動脈疾患(CHD)、致死的、非致死的脳卒中、CHDと脳卒中を合わせたCVDの発症率と低脂肪食の関係を調べて、報告しています(論文タイトル:Low-Fat Dietary Pattern and Risk of Cardiovascular Disease)。
その結果、CHD、脳卒中、CVDの発症者数は、介入群でそれぞれ1,000人(1年あたりの発症率は0.63%)、434人(0.28%)、1,357人(0.86%)で、対照群の1,549人(0.65%)、642人(0.27%)、2,088人(0.88%)に比べあまり差はありませんでした。
食事介入をしても、CHD、脳卒中、CVDのリスクがあまり低下していないというわけです。
著者らは、CVDの危険因子を改善し、発症リスクを減らすためには、よりポイントを絞った食事
とライフスタイルが必要であろうと述べています。

2) 同じ女性たちを対象として、Washington大学のShirley A. A. Beresford氏らの研究では、
低脂肪食が大腸がんの予防に有効かどうかを評価しています(論文タイトル:Low-Fat Dietary
Pattern and Risk of Colorectal Cancer)。
追跡期間中に大腸がんを発症した女性は480人で、介入群201人(発症率は年間0.13%)、対照群は279人(同0.12%)で、やはりその差はあまりなさそうという結果でした。

3) 米国Fred HutchinsonがんセンターのRoss L. Prentice氏らは、乳がんと低脂肪食の関係を
調べています(論文タイトル:Low-Fat Dietary Pattern and Risk of Invasive Breast Cancer)。
8.1年の追跡の間に浸潤性の乳がんを発症したのは、介入群655人(0.42%)、対照群1,072人(0.45%)で、ここでも有意差は認められませんでした。
しかし著者らは、日頃から高脂肪食を好む女性を対象とする試験をおこなえば、有意な結果が得ら
れたのではないかとしています。

この3編の論文ではいずれも、低脂肪・野菜の豊富な食生活の効果があまり見られなかったのですが、低脂肪・野菜食の効果は他の研究で明らかです。

研究対象としての人の選び方によっては、このように有効性を否定する結果になるのかもしれません。
しかし同時に、対象となる人を選んでこのような食事を薦めることが重要で、病気のハイリスク群の人を的確に選択することが課題と思われます。

ハセ博士=薬学博士。国立大薬学部や米国の州立大医学部などで研究や教官歴がある。

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