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「プラセボ効果:偽の薬でも鎮痛成分が放出される」
――ハセ博士のヘルシー情報最前線(425)

プラセボ効果とは、本来効き目がない物でも、その有効性を信じて飲めば効いてしまうというもので、“イワシの頭も信心から”などといわれ続けているものです。
最近では、鍼灸がプラセボ効果によるのではないかとか、ある種のサプリメントもそのたぐいではなどといった批判がされています。
しかし、そのプラセボ効果そのものはよく分かっておらず、現代医学の一大テーマです。

そこで今回は、米国の研究者らが、なぜ人はプラセボ偽薬による治療で、実際に痛みがなくなるかを明らかにしたという話題です。

これは、ミシガン・ヘルスシステム大学(the University of Michigan Health System)のJon-Kar Zubieta博士らが、神経科学誌(Journal of Neuroscience)に報告したものです。
研究では、14人のボランティアを対象に、プラセボ偽薬を与えた際の脳内の働きを、画像診断法により調べました。

まず、ボランティアの人のあごに食塩水を注射して、人工的な痛みを感じさせ、次いでプラセボ処理として偽の薬を与えて、その人の脳の活動を陽電子放出断層撮影装置(positron emission tomography (PET) scanner)で調べました。

その結果、脳内のホルモンであるエンドルフィンの活性が増強することが明らかになったそうです。

この際、実際に痛みを感じるなくっているかを調べたところ、プラセボ処理を受けた人のうち9名が、痛みを全く感じなくなっていました。

また、中には単に今から薬を与えられると聞いただけで、エンドルフィンの活性が高くなり、痛みを感じなくなる人もいたそうです。

特に、疼痛を感じる脳の4つの領域(left dorsolateral prefrontal cortex, the pregenual rostral right anterior cingulate, the right anterior insular cortex, the left nucleus accumbens)の活動が最も変化しており、背側前前頭皮質(dorsolateral prefrontal cortex)も痛み止めが期待される時に活動度が変動していたそうです。

これらの結果から、研究者らは、プラセボ効果は単に心理的なものではなく、生理的な現象として説明できるとしています。

また、この結果は、鍼灸などの治療効果も説明できる可能性もあり、さらに鎮痛薬自体の効果もプラセボによるところも大きく、80~90%の人はその恩恵を受けているのではないかと論文で述べられています。

残念ながら日本では、プラセボは医薬品の効果を分からなくさせるものとする考え方が主流のようですが、欧米あたりではもっと積極的にプラセボ効果を利用しようとする動きが盛んのようです。

ハセ博士=薬学博士。国立大薬学部や米国の州立大医学部などで研究や教官歴がある。

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