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重金属とキレーション――PART3 欧米のキレーションを取り巻く社会問題

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 PART1では重金属が与える体への影響を、PART2ではキレーションがいかに重金属のデトックスに効果を発揮するかを説明しました。重金属は知らないうちに体に蓄積し、さまざまな体調不良の原因とされています。

 このことから重金属を積極的に体の中から取り除くことのできるキレーション療法は予防医学・アンチエイジング医療の分野で積極的に取り入れられています。また美肌効果を期待してキレーションを行なう美容クリニックは年々増えています。さまざまな治療にキレーション療法が用いられる中、欧米ではキレーション療法を自閉症の治療法としても使用しています。

 キレーション療法と自閉症の関連を追究する研究は行なわれていないのが現実ですが、臨床現場ではキレーション療法によって自閉症の症状が改善されたという報告がいくつもされています(注17、18)。 そのため自閉症の子供をもつ親からはキレーション治療に大きな期待と希望が注がれています。そこでPART3ではアンチエイジング医療から少し離れた現場で行なわれている自閉症治療のためのキレーションについてお話しします。

 近年欧米で一躍キレーション治療の認知度が高くなった理由の背景には自閉症を伴う子供の数が急増しているという事実があります。米国疾病管理予防センター(Center for Disease Control and Prevention、通称CDC)の報告によると、自閉症の割合は10年前が子供1万人あたり1人であったのに対して、現在では150人に1人という高い割合で診断されています。この急激な上昇の理由として批難の的になったのが「チメラゾール」というワクチンに使用する有機水銀由来の防腐剤でした。

 NPO法人SafeMinds(水銀由来の脳神経疾患をなくそうと積極的に活動している非営利団体)のホームページではチメラゾールが自閉症を引き起こすと強く示唆しており、その理由として自閉症を伴う子供は自閉症を伴わない子供に比べて水銀の蓄積濃度が500パーセントも高いと報告しています(注19)。

 水銀・チメラゾール・自閉症をキーワードにこの問題は欧米の主要メディアの注目を集めています。2005年6月25日の『The New York Times』の記事「On Autism’s Cause, It’s Parents vs. Research」(自閉症の原因、親と研究機関との戦い)では自閉症の子供を持つ親の凄惨とも言うべき苦難とチメラゾールを認可した政府・研究機関とのバトルを報告しています(注20)。

 わが子が小児ワクチンを摂取してから急に言葉をしゃべらなくなり、表情がなくなることへの悲しみと怒りはアメリカの世論の関心を引き付ける問題へと進展してきました。

 2006年に入ってからチメラゾールと自閉症の責任追及のバトルに大きな動きが出てきました。カナダのマッギル大学医学部の研究グループ(国際的にもトップクラスの大学研究機関)が2万5000人の子供を対象に行なった大型研究の結果によると、チメラゾールは自閉症の発症に関連がないという結果を発表したのです。研究グループの報告によるとチメラゾールの使用は5年前より禁止されているにもかかわらず現在もなお子供たちの自閉症発生率が高いことから、チメラゾールと自閉症の直接的な関連を否定したのです(注21)。この論争は今後も続きそうです。

 日本でキレーション療法というとアンチエイジングや美容医療を連想することが多いのですが、その華やかさの裏には愛する我が子の笑顔を奪われた怒りと悲しみ、ワラをもつかむ思いを託した希望という名の親の愛が横たわる一面があることは否定できません。

(注17)Marcus, Amy. A Radical Approach to Autism. The Wall Street Journal February 15, 2005.
(注18)Morrice, Polly “‘Evidence of Harm’: What Caused the Autism Epidemic? The New York Times April 17, 2005.
(注19)www.safeminds.org/mercury/history.html
(注20)Harris Gardner and O’Connor Anahad. On Autism’s Cause, It’s Parents vs. Resarch. The New York Times. June 25, 2005.
(注21)Mercury-Based vaccines Not Linked to Autism: Study. Health Hiughlights: July 5, 2006.

(A.T.Still University of Hearth Sciences Medical Student・Makoto Uchiyama)

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