アンチエイジングニュース

ストレスは免疫力を増強する?――ハセ博士のヘルシー情報最前線(73)

 

 生体がばい菌などの外敵と戦って生きていくうえで、なくてはならないのが免疫です。免疫力が弱くなってきますと、さまざまな病気にかかりやすくなりますので、何とかして免疫を保ち、その免疫反応がキチンと起きるように体を整えておくことが重要です。

 さて、今回は、ある程度の精神的なストレスは免疫力の増強に重要であることが分かったという話題です。

 今までも免疫反応の起こり易さとメンタルなストレスとの関係について、さまざまな議論がありました。そして、「ストレスを負荷すると免疫力を弱くさせるので、ストレスがない方がよい」という意見も提出されていました。

 ところが、今回の結果はその逆で、「マイルドな精神的ストレスを受けた方が、免疫によい効果をもたらす」というものです。

 これは、コロラド大ボルダー校のMonika Fleshner氏らが、米国生理学誌(American Journal of Physiology – Regulatory, Integrative, and Comparative Physiology (DOI: 10.1152/ajpregu. 00145.2005)に報告したものです。

 研究では、マウスに免疫源としてKLHを注射し、その後にKLHに対する免疫の出来方を調べました。なお、KLHはヘモシアニンの一種のkeyhole limpet hemocyaninと呼ばれる物質で、多くのタンパク質と同じように免疫応答を引き起こすことが知られており、よく免疫反応の研究に使用されるものです。

 また、精神的なストレスとしては、KLHを注射する2時間半前に、通常とは異なる金網で出来た小さなケージにマウスを入れて、ストレスを与えたそうです。そして、そのようなストレスを与えなかったマウスと同様にKLHを注射し、それから9ヵ月後に再びKLHを投与した時の免疫応答のしやすさを調べました。

 その結果、ストレスを与えたマウスの方が、KLHを与えた時に起こる皮膚の炎症反応が強く起こっており、免疫反応が増強されていることが分かりました。

 以上の結果から、研究者らはマウスに短期間のストレスを与えると、その後のワクチン接種などに対する免疫力が強まるとしています。

 この免疫力を高める効果は少なくとも9ヵ月間継続しており、これはマウスのほぼ一生涯の期間ですので、非常に長くその有効性が保たれるとしています。また、KLH以外の、実際の細菌感染などによる免疫反応にも効果があることも確認されたそうです。

 研究者らは、このようなマイルドなストレスはメモリーT細胞と呼ばれる細胞性免疫を活性化させ、そのメモリー(記憶)によってその後に襲ってきた外敵に対しても速やかに対応できると考えています。

 今までの研究では、過度のストレスがあった場合には、免疫反応は抑制され、その活性も低下すると言われていましたが、今回のような比較的マイルドなストレスは逆に免疫系を活性化することになります。

 最近国内でも「笑いが免疫を増強する」といった研究が報告されていますが、笑いやちょっと変化のあるストレスは体に良いようです。大いに笑い、そして新しい環境にも積極的にチャレンジするのがよさそうですね。

ハセ博士=薬学博士。国立大学薬学部や米国の州立大学医学部などで研究・教官歴がある。現在、製薬企業で研究に従事している

  • facebook Share
  • Tweet
  • LINE

この記事が気に入ったら「いいね!」しよう
最新記事をお届けします

カテゴリ一覧