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ハリは頭痛にある程度有効だが――ハセ博士のヘルシー情報最前線(66)

 世界中でハリ治療は人気を集めてきています。その傾向は日本でも同様で、街のあちらこちらでハリ治療院を見かけるようになりました。

 ところが今回、「ハリ治療は確かに頭痛などの緩和にある程度有効だが、それは主に精神的なプラセボ効果である」とする報告が発表され、物議をかもしています。

 これは、ドイツ・ミュンヘンにあるTechnische大学代替医療センターのKlaus Linde博士が、米国医学会誌(The Journal of the American Medical Association, 2005; vol 293: pp 2118-2125)に報告したものです。

 研究では、偏頭痛の治療にハリ治療が有効かどうかを調べました。

 ご存知のように、東洋医学的には体中に点在する200もの特定のツボにハリを打つことで「経絡」を刺激して治療するというものです。

 しかし、西洋医学的にはそのような経絡の存在は疑問視されており、むしろハリは痛みを抑える脳のホルモンであるエンドルフィンの分泌を高めたり神経伝達に必要なセロトニンの分泌を変化させたりするのではないかと考えられていました。

 そこで、今回の研究では、本来のハリ治療のツボとは異なる部位にハリを打った場合と比較しました。

 偏頭痛持ちの302人の患者さんを2つのグループに分け、一方のグループには本来のツボを、もう一方のグループにはツボとは異なる部位にハリ治療を施したそうです。

 このような鍼治療を8週間に12回行なったところ、治療後の1ヵ月以内に頭痛の程度が改善しており、1ヵ月あたりに起こる頭痛の頻度が5回程度から3回程度にまで減少したそうです。

 しかし、ツボにハリを打った群とツボとは異なる部位に打った群とに差は見られず、また全く治療を受けなかった群でも約15パーセントの改善が見られたそうです。

 この結果から研究者らは、ツボとは異なる部分にハリを打った場合に比べて特に効果が高まることはなく、単に精神的なプラセボ効果であろうと述べています。

 今回の報告と同様に、ハリ治療にはプラセボ以上の効果がないとする研究結果は以前から何度か報告されています。一方で「ハリは効果があるに違いない」と考える患者さんに特に効果があることも知られています。プラセボ効果といえども実際に患者さんの痛みを改善すること自体間違いなく、治療という点から考えると意味があるのではないか、とする考えもあります。ハリ治療の施術者は一般に患者さんの立場に立ち、患者さんと話をしながら治療を行なうことが多いのですが、このような患者さんとの対話が効果を高めているのではないかとする意見もあります。

 なお、今回の研究結果は偏頭痛に特化したもので、そのほかの関節炎などへの効果については分かりません。今後さらに科学的な解明が期待されます。

ハセ博士=薬学博士。国立大学薬学部や米国の州立大学医学部などで研究・教官歴がある。現在、製薬企業で研究に従事している

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